建設業の自社株対策が効かなくなる?オペリース・不動産・保険の株価対策と今後の備えを解説

公開日:2026/10/12

この記事はYouTubeでもご覧いただけます。

動画でご覧になりたい方は、

建設業支援TV「お金のミカタ」
をご覧ください。

非上場株式の評価が60年ぶりに見直される見込みです。これにより、オペレーティングリース・借入による不動産取得・退職金支給など、オーナー経営者がこれまで行ってきた「自社株対策(株価対策)」の多くが、効かなくなる可能性が出てきました。

しかも、真面目に利益を積み上げ、内部留保を厚くしてきた「いい会社」ほど、評価が数倍に跳ね上がるおそれがあります。500社超の建設業を支援してきたシードコンサルティングが、いまオーナー社長が知っておくべき変化と、今すぐできる3つの備えを解説します。

自社株対策(株価対策)とは

オーナー経営者が保有する自社株の相続税・贈与税評価額を引き下げ、事業承継時の税負担を軽くするために行う財務上の対策の総称です。

その自社株対策が、なぜ効かなくなろうとしているのか。まずは「これまでの株価対策には、実は3つの型しかなかった」という事実から見ていきましょう。

これまでの自社株対策は「3つの型」しかなかった

オーナー経営者にとって、資産の大半は自社株です。だからこそ、自社株を圧縮することが相続対策として最も効果を発揮してきました。そして、その方法は突き詰めると次の3つに集約されます。

型1:会社規模の「区分」を操作する

現行の評価方法では、会社が大会社・中会社・小会社のどの区分に該当するかによって、「類似業種比準価額」の使える割合が変わります。一般に、大会社に区分されるほど類似業種比準価額の比重が高まり、株価を圧縮しやすくなります。そのため、従業員を増やすなどして大会社に区分させ、評価額を下げるという方法が使われてきました。

型2:利益を一時的にへこませる

株の移転直前期に、意図的に利益を圧縮する方法です。役員退職金の支給、オペレーティングリースの活用、役員報酬の引き上げなどで一時的に利益をドンと下げると、株価も下がります。その下がったタイミングで株を移転する——これが王道とされてきました。

型3:会社を分ける・資産を組み換える

持株会社(ホールディングス)や資産管理会社を設立し、借入によって不動産を取得するといった資産の組み換えを行う方法です。不動産は路線価などによる評価で圧縮効果が働くため、相続対策として持株会社・資産管理会社を活用するケースが広く行われてきました。

なぜ、これらの対策が「効かなくなる」のか

国税庁が名指しで「圧縮事例」を問題視

今回の見直しは、有識者による委員会での協議から始まりました。第1回会議から国税庁や有識者が集まって議論を重ね、第5回あたりからかなり具体的になり、日本経済新聞でも大きく報じられるようになっています。委員自身が「急ぎすぎではないか」と口にするほど、国は急ピッチで進めている印象です。

その委員会では、国税庁が過去の大規模な株価圧縮事例を、100億円・65億円・19億円・10億円といった規模で取り上げました。会社規模の区分操作、子会社への循環貸付、オペレーティングリースなど、これまでの対策手法が一つひとつ検証され、「節税目的として行き過ぎている」として、見直しの対象になっています。

「評価方法そのもの」を変えにきている

これまでは、行き過ぎた対策が一つ塞がれると、また別の手が出てくる——といういたちごっこが続いてきました。しかし今回は、その原因は評価方法そのものにあるとして、根本を変えにきています。現時点で公表されている「叩き台」では、次のような方向性が示されています。

これまでの対策の型 見直しの方向(叩き台)
会社規模の区分操作 規模に関わらず統一の評価方法にする方向
利益を一時的にへこませる 非経済的(意図的)な損益を除外して評価する方向
持株会社・資産管理会社への分割 完全支配関係にあるグループは全体として評価する方向

具体的に効かなくなる見込みとして挙がっているのは、役員退職金の支給、従業員を増やして大会社にする方法、持株会社の切り出し、オペレーティングリース、借入による不動産取得、無議決権株式や従業員持株制度の活用などです。せっかく準備してきた退職金制度すら、これまでのようには効かなくなる可能性があります。

生命保険について
生命保険については、保険料の損金計上の扱いなどから、一定の効果が残る可能性があるとされています。ただし、正式な制度内容は確定していないため、今後の公表情報を確認する必要があります。

「上がる会社」と「下がる会社」に分かれる

日本経済新聞では当初、「相続税評価が下がる」という切り口で報じられました。確かに、小規模で利益が出ていない会社は、新評価で評価が下がる傾向があります。

しかし問題はその逆です。利益が安定している会社、内部留保が厚く純資産が充実している会社は、新評価に切り替わった途端に、自社株の評価が数倍に上がる可能性があります。

注意したいのは、堅実な経営をしてきた会社です。
真面目に利益を積み上げてきた「いい会社」こそ、自社株評価が跳ね上がり、後継者の税負担が重くなる可能性があります。

焦る必要はない——ただし「知っておく」ことが重要

ここでポジティブな話をひとつ。現行の評価方法は、いまはまだ使えます。公表されている情報では、新制度のスタートは2028年1月以降の見込みとされており、2027年12月末までは現行制度という認識になります。

「今のうちに何かやってください」と煽るつもりはありません。無理に慌てて駆け込むようなやり方は、おすすめしません。

ただ、こうした状況を知ったうえで、もともと承継や対策を考えていたのであれば、現行評価で説明できる範囲のうちに手を打っておくことは、十分に合理的な判断だといえます。

※新しい評価方法の適用時期は正式決定前の見込みです。今後の制度改正によって変更される可能性があります。

いま、オーナー社長にやってほしい3つのこと

特に、そこそこ規模があって純資産が厚く「株価が高そうだな」と感じる会社ほど、次の3つに今のうちに着手しておくことをおすすめします。

1.会社の決算を確認する
これから迎える今期・来期あたりの決算が、株価評価に影響してきます。何らかの対策を考えているなら、まずこの決算がどうなのかを見ておくことが第一歩です。

2.役員退職慰労金規定の有無をチェックする
この規定があるかないかは、いざというときに大きく効いてきます。規定がない会社は、早めに整備しておくことをおすすめします。

3.株主名簿を確認する
実際に名簿を見てみると、まだ祖父母や親族、先代の社長が少数でも株を持っているケースが少なくありません。そのまま相続が発生すると、現役の経営者が思わぬ負担を負うことになります。株が分散している場合は、今のうちに賢い方法で集約しておくことが大切です。

「信頼できる顧問税理士に任せてあるから大丈夫」と、普段は自社株の状況を見ていない社長も少なくありません。しかし、どこに・どのくらい株があるのかを、社長自身の目で確認しておくことが重要な時期に来ています。

この記事のまとめ

60年ぶりの評価方法の見直しによって、これまでの自社株対策(オペレーティングリース・不動産・退職金など)は効かなくなる方向にあります。そして、真面目に利益を積み上げてきた会社ほど、新評価で自社株が跳ね上がるおそれがあります。

大切なのは、慌てて対策に走ることではなく、まず「自分の会社の株が、今いくらなのか」を正確に知ることです。それが1億円なのか、5,000万円なのか、10億円なのかで、打つべき手はまったく変わります。

シードコンサルティングでは、決算書をもとにした自社株評価の現状把握を無料でサポートしています。「新制度に切り替わる前に何をすべきか」でお悩みの社長は、まず現状把握からお気軽にご相談ください。

あわせて読みたい|事業承継税制の最新動向

自社株の評価が上がった場合、後継者の税負担をどう軽減すればよいのでしょうか。事業承継税制の仕組みや今後の見直し、2027年の重要な期限について、こちらの記事で詳しく解説しています。


建設業の事業承継税制とは?自社株評価8.6倍と納税猶予・免除を解説 →

よくある質問(FAQ)

Q1. これまでの自社株対策は、いつから効かなくなるのですか?

A. 公表されている情報では、新しい評価方法は2028年1月以降に適用される見込みとされており、2027年12月末までは現行制度という認識になります。ただし詳細やスケジュールは確定していないため、今後の正式発表を確認する必要があります。切り替わりのタイムラグがあるため、もともと対策を考えていた場合は、現行評価で説明できる範囲のうちに検討する余地があります。

Q2. オペレーティングリースや持株会社を使った対策は、もう意味がないのですか?

A. 今後は効果が薄れる方向で議論されていますが、現行制度が有効なうちは従来どおり使えます。また、生命保険のように一定の効果が残る可能性があるとされているものもあります。重要なのは、新旧どちらの評価方法を前提にするかで打ち手が変わるという点です。個別の判断は税理士等の専門家にご相談ください。

Q3. 真面目に利益を出してきた会社ほど不利になるというのは本当ですか?

A. 新評価では、利益が安定し、内部留保・純資産が厚い会社ほど評価額が上がりやすいと試算されています。堅実な経営をしてきた会社こそ、自社株評価が数倍になる可能性があるため、早めに現状を把握しておくことが重要です。

Q4. まず何から確認すればいいですか?

A. 3つあります。①会社の決算(今期・来期の決算が株価評価に影響します)、②役員退職慰労金規定の有無、③株主名簿(祖父母や親族、先代が株を持っていないか)です。特に株が分散している場合は、早めの集約を検討することをおすすめします。

Q5. 自社株の評価額は、自分で把握できるものですか?

A. 大まかな見立ては決算書からある程度立てられますが、会社の資産構成などによって、想像していた額と実際の評価が大きく異なるケースは少なくありません。まずは専門家による現状把握を通じて、正確な評価額を知っておくことをおすすめします。

この記事の著者

岡田 聡(おかだ さとし)

株式会社シードコンサルティング 代表取締役

建設・リフォーム業界の中小企業に特化した財務・事業承継・M&Aコンサルティングの専門家。20年以上にわたり500社超の建設業経営者を支援。100件以上の事業承継案件を手がけた実績を持つ。YouTube「建設業支援TV〜お金のミカタ〜」で業界の経営ノウハウを発信中。日本経営士協会 経営士、相続事業承継コンサルティング協会 エグゼクティブコンサルタント。

無料相談のご案内

「うちの自社株は、今いくらの評価?」「新制度に変わると、どれくらい上がる?」という社長へ。

シードコンサルティングでは、決算書をお預かりし、自社株評価の現状把握と、事業承継に向けた具体的な打ち手を一緒に整理します。事業承継に特化した「事業承継ドック」もご用意しています。

自社株評価と事業承継の準備を、今から始めませんか?

初回60分・オンライン対応可・無料です。

無料相談を申し込む

※本記事は制度の一般的な解説であり、法的・税務的な助言を目的とするものではありません。制度の内容は現時点(2026年9月)で確定していない部分を含み、今後変更される可能性があります。個別の税務判断については、必ず税理士等の専門家にご相談ください。

財務・事業承継・M&Aにお困りならお気軽に無料相談を

お電話でのお問い合わせはこちら

03-6811-2930

平日09:00〜18:00 土日祝日除く