建設業の事業承継税制とは?「税金ゼロ」の真実と2027年末の期限を専門家が解説
公開日:2026/10/13
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「事業承継税制を使えば自社株の税金はゼロになる」——これは半分正解で、半分は誤解です。贈与税・相続税は確かに一旦ゼロで引き継げますが、原則は「免除」ではなく「猶予(先送り)」です。
ただし2026年に入り、中小企業庁の検討会で「猶予税額を免除とする措置」の検討が進んでいます。賃上げ・設備投資・地域貢献などに取り組む会社であれば、将来的に免除される可能性が出てきました。
本記事では、500社超の建設業を支援してきたシードコンサルティングが、「猶予」と「免除」の違い、使われない3つの理由、そして2027年末という重要な期限までを、建設会社の社長向けにわかりやすく解説します。
事業承継税制とは
後継者が先代から自社株を贈与・相続する際にかかる贈与税・相続税の納税を猶予し、一定の要件を満たした場合は免除することで、中小企業の円滑な事業承継を後押しすることを目的とした税制上の特例制度です。
事業承継税制は「税金ゼロ」になるのか?
結論から言えば、「一旦ゼロ」になるが、原則は免除ではなく猶予です。ここを誤解したまま進めると、「こんなはずではなかった」となりかねません。
「猶予」と「免除」はまったくの別物
| 区分 | 意味 |
|---|---|
| 猶予 | 納税を先送りすること。一定の事由が生じると、将来納税が必要になる可能性があります。 |
| 免除 | 猶予されていた税金について、納税の必要がなくなること。 |
経営者にとって自社株は最も大きな資産の一つですから、本当に「免除」されるなら誰もが使うはずです。しかし現実には、条件を満たさない限り免除まではたどり着かないため、「結局どこかで課税されるのでは」という不安が残ります。
現行制度で「免除」になるのはどんなときか
現行の事業承継税制でも、免除になるケースはあります。代表的なのは、先代から後継者(2代目)へ、さらにその次の後継者(3代目)へと引き継いだ場合などです。
ただし、これはかなり先の話になりがちです。たとえば65歳の社長が40歳の後継者へ株を移し、その後継者がさらに次の世代へ渡すとなると、20〜30年先になることも珍しくありません。
「そこまで先の経営を今から確定させてほしい」と言われても、現実には難しい——ここが現行制度の使い勝手の悩みどころでした。
なぜ「お得なはずの制度」が使われていないのか
国も後押ししている制度ですが、対象になりうる会社のうち、実際に活用されているのは3〜4社に1社程度にとどまるとみられます。利用企業数も1万〜1.2万社規模で、潜在的な対象から見れば限定的です。使われない主な理由は3つあります。
理由1:猶予であって免除ではない
前述のとおり、「一旦ゼロ」でも将来課税される可能性が残ります。「本当に得なのか判断しづらい」というのが、現場で最もよく聞く声です。
理由2:猶予取消しのリスクがある
猶予期間中に一定の要件を満たせなくなると、猶予が取り消され、そのタイミングでまとめて納税が発生する可能性があります。この「突然の課税」への不安が、導入をためらわせます。
理由3:手続き・申告の負担が重い
一度適用すると、継続的な報告や申告が必要になります。「手続きが面倒」という実務上のハードルも、普及が進まない一因です。
シードコンサルティングでは、こうした「使いにくさ」も踏まえたうえで、各社の状況に応じて「そもそも適用すべきか」から一緒に整理しています。
2026年、制度が大きく変わろうとしている
いま、事業承継を取り巻く税制は大きな転換点にあります。背景にあるのは、約60年ぶりとされる非上場株式の評価ルールの見直しです。
株価が「上がる会社」が出てくる
評価ルールが変われば、利益が出ていて純資産も厚い優良企業ほど、自社株の評価額(株価)が大きく上がる可能性があります。株価が上がれば贈与税・相続税の負担も増え、後継者への株の移転がさらに難しくなる——という見通しが示されています。
逆に言えば、きちんと利益を出し、資産を積み上げてきた会社ほど、承継のハードルが上がりかねないということです。
中小企業庁の検討会で「免除措置」が明記された
こうした流れを受け、2026年8月時点で中小企業庁の検討会(直近は第6回)が重ねられています。その報告案の中に、「猶予税額を免除とする措置」の検討が明記されました。
「猶予のままでは事業承継が進まない」という問題意識から、免除へ踏み込む議論が始まっています。
また、2026年8月末には、事業承継税制の抜本的な見直しが税制改正要望の上位に挙がっており、制度は廃止ではなく、強化したうえで継続する方向性が示唆されています。
免除の条件は「賃上げ・設備投資・地域貢献」か(※検討中)
現時点で報じられている情報では、免除の対象となりうるのは、賃上げ・設備投資・地域貢献などに取り組み、猶予によって手元に残った資金を事業に活用している成長企業というイメージです。
人を雇い、賃上げし、設備に投資して地域に貢献している会社に、猶予ではなく免除の道を開こうという設計が協議されているとみられます。
注意:免除条件はまだ確定していません。
これらはあくまで検討段階の「叩き台」です。節税目的の濫用を防ぐための措置や、免除額の上限設定なども議論される見込みです。最終的な内容は年末の税制改正の議論を経て固まっていくとみられるため、今後の正式発表を確認する必要があります。
建設業経営者が押さえるべき「2027年末」という期限
制度がどう変わるにせよ、現行の特例措置には明確な期限があります。ここは必ず押さえてください。
特例承継計画の提出期限:2027年9月30日
現行の特例措置を使うには、「特例承継計画」の提出が必要です。この提出期限は、改正前の2026年3月31日から2027年9月30日まで延長されています(法人版の場合)。
株の移転(適用)の期限:2027年12月31日
一方で、実際に株を贈与・相続して特例措置の適用を受ける期限は2027年12月31日のまま、延長されていません。
つまり、計画提出の期限は延びても、肝心の「株を動かす」期限は変わっていない点に注意が必要です。
| 手続き | 期限 |
|---|---|
| 特例承継計画の提出 | 2027年9月30日 |
| 特例措置の対象となる贈与・相続 | 2027年12月31日 |
2028年1月以降は評価ルールが変更され、株価が大きく上がる会社も出てくる可能性があります。ただし、新制度の内容や適用時期は正式決定前です。現行制度を使うなら、提出期限から逆算した準備が欠かせません。
シードコンサルティングでは、建設業に特化した「事業承継ドック」を通じて、現状の株価・承継スケジュール・使うべき制度を一社ごとに整理しています。
いま建設業の社長がやるべき3つのこと
1.猶予中の資金の「使い道」を整理する
既に事業承継税制を使っている会社も、今後の免除措置の議論を見据えると、猶予によって手元に残った資金をどう使うか(賃上げ・設備投資など)の整理が重要になりそうです。
2.特例承継計画は「出しておく」選択肢を検討する
実際に株を移すかどうかは別として、特例承継計画を提出しておくこと自体は選択肢の一つです。制度改正によっては免除の可能性もあり得るため、現状のまま機会を逃さない準備が有効な場合があります。
3.後継者と「いつ・どう渡すか」を決めるきっかけにする
特例承継計画を出すには、後継者を特定し、いつまでにどう株を移すかを決める必要があります。「先代の株をいつ渡すのか」という、普段は先送りしがちな問題に踏ん切りをつけるきっかけとして活用する——これも制度の使い方の一つです。
なお、本記事の内容は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の税務判断を保証するものではありません。実際の適用にあたっては、自社の状況に応じて税理士などの専門家にご相談ください。
あわせて読みたい|自社株評価と事業承継税制
事業承継税制を検討するうえでは、まず自社株の評価額を知ることが重要です。非上場株式の評価見直しによる影響や、納税猶予・免除の仕組みについて、こちらの記事でも詳しく解説しています。
よくある質問(FAQ)
Q1. 事業承継税制を使えば、相続税・贈与税はゼロになりますか?
A. 「一旦ゼロ」で引き継ぐことは可能ですが、原則は免除ではなく「猶予(先送り)」です。一定の事由が生じれば、将来納税が必要になる可能性があります。ただし2026年以降、賃上げ・設備投資などの条件を満たす会社について「免除」とする措置が検討されています(※検討段階)。自社が免除の対象になり得るかは個別判断が必要なため、専門家にご相談ください。
Q2. 事業承継税制は、なぜ使う会社が少ないのですか?
A. 主な理由は3つです。①猶予であって免除ではない、②猶予が取り消されると突然課税されるリスクがある、③継続的な報告・申告など手続きの負担が重い、という点です。対象になりうる会社のうち、実際の活用は3〜4社に1社程度にとどまるとみられます。シードコンサルティングでは、こうした点を踏まえ「そもそも適用すべきか」から整理しています。
Q3. 2026年の税制改正で、事業承継税制はどう変わりそうですか?
A. 中小企業庁の検討会では「猶予税額を免除とする措置」の検討が明記され、制度は廃止ではなく強化して継続する方向性が示唆されています。免除の条件として賃上げ・設備投資・地域貢献などが議論されていますが、いずれも検討段階であり確定していません。最終的な内容は年末の税制改正の議論で固まる見込みです。
Q4. 特例措置を使うには、いつまでに何をすればいいですか?
A. 「特例承継計画」の提出期限は2027年9月30日(法人版)まで延長されていますが、実際に株を贈与・相続して適用を受ける期限は2027年12月31日のまま変わっていません。現行制度の活用を検討するなら、提出期限から逆算した早めの準備が重要です。シードコンサルティングでは承継スケジュールの設計からサポートしています。
Q5. 自社株の評価が上がると、承継にどんな影響がありますか?
A. 約60年ぶりとされる評価ルールの見直しにより、利益や純資産が厚い優良企業ほど株価が上がる可能性があります。株価が上がれば贈与税・相続税の負担も増え、後継者への株の移転が難しくなる可能性があります。だからこそ、現状の株価と改正後の見通しを早めに把握しておくことが、建設業の社長にとって重要です。
この記事の著者
岡田 聡(おかだ さとし)
株式会社シードコンサルティング 代表取締役
建設・リフォーム業界の中小企業に特化した財務・事業承継・M&Aコンサルティングの専門家。20年以上にわたり500社超の建設業経営者を支援。100件以上の事業承継案件を手がけた実績を持つ。YouTube「建設業支援TV〜お金のミカタ〜」で業界の経営ノウハウを発信中。日本経営士協会 経営士、相続事業承継コンサルティング協会 エグゼクティブコンサルタント。
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※本記事は制度の一般的な解説であり、法的・税務的な助言を目的とするものではありません。制度の内容は現時点(2026年10月)で確定していない部分を含み、今後変更される可能性があります。個別の税務判断については、必ず税理士等の専門家にご相談ください。
