建設業の借入は「今」か「1年後」か?金利3%時代の借入戦略を専門家が解説

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設備投資や運転資金の借入を、いま実行すべきか先送りすべきか——迷っている建設会社の社長は少なくありません。

結論から言えば、使い道と返済の見通しが定まっている会社は「今」動いたほうが有利です。金利が下がる材料はほとんどなく、現在の3%が半年後・1年後には3.5%へと上がっている可能性が高いためです。

2025年9月、日本経済新聞は一面で金利上昇局面の到来を報じ、「政府も企業も選別を迫られる」と指摘しました。過去30年続いた「金利がつかない世界」が終わり、借入の判断基準そのものが変わろうとしています。本記事では、500社超の建設業を支援してきたシードコンサルティングの視点から、金利3%時代の借入戦略と、いますぐ確認すべきポイントを解説します。

建設業の借入戦略とは、
金利・借入の目的(使い道)・返済可能額の3つを照らし合わせ、「いつ・いくら・どの条件で」資金を調達するかを設計する意思決定のことです。金利上昇局面では、金額の多寡よりも「借りる目的と出口が一致しているか」が最も重要な判断軸になります。

金利3%は経営にどれくらいのインパクトがあるのか

1億円を借りると、利息だけで年間300万円

まず、金利上昇の重みを具体的な数字で見てみましょう。仮に1億円を金利3%で借り入れると、年間の利息は300万円になります。これは元金の返済とは別に、純粋なコストとしてのしかかる金額です。

1億円 × 金利3% = 年間利息300万円
元金の返済とは別に、毎年これだけのコストが発生します。

この300万円がどれほど重いか。営業利益率3%の会社が、売上1億円を上げてようやく残る利益が300万円です。つまり、利息を払うためだけに1億円分の売上を回さなければならない、という計算になります。実際には元金の返済も乗ってきますから、利益が300万円では到底足りません。1,000万円、2,000万円と、さらに稼ぐ必要が出てきます。

「利息を返すだけで精一杯」の会社が増えている

現場で最近増えているのが、金利の支払いだけで手一杯になり、元金の返済まで手が回らないという状態です。金利がつく世界に戻ったことで、これまで見えていなかった負担が一気に表面化しています。借入額・金利・返済額の3つを並べ、「今の会社の体力でちゃんと回るのか、返せるのか」をもう一度点検すべきタイミングです。

借入は「今」がいいのか?——専門家の結論

使い道が具体的に決まっているのであれば、答えは「今」です。理由は大きく3つあります。

理由1:金利が下がる材料がほとんどない

現在の金利が下がる方向に向かう要素は、今のところ見当たりません。インフレは加速し、金融政策も金利上昇の方向にあります。むしろ3%が3.5%へと上がっていく可能性のほうが高い状況です。

「今日が、これから先で最も金利が安い日」である可能性がある。

使い道が決まっているなら、半年後に申請するより今のうちに動いたほうが、長期で見て低い金利を確保できるかもしれません。

理由2:金利が上がると、銀行は「数量」より「中身」を見る

金利が上昇する局面では、銀行の融資姿勢も変わります。これまでの「とにかく貸出量を伸ばす」姿勢から、「一社一社の中身(財務内容・返済力)をしっかり見る」姿勢へとシフトしていきます。借りる側からすると、事業の中身が今まで以上に問われ、審査は厳しくなる方向です。決算の状況によっては、1年後より今のほうが良い条件で通る、というケースも十分にあり得ます。

理由3:材料費・人件費の上昇に、利息が上乗せされる

建設業では材料費も人件費も上昇が続いています。そこに利息の負担が乗ることで、これからは利益を残しづらい時代になっていきます。コスト構造が厳しくなる前に、必要な資金を確保しておくという考え方も、有力な選択肢のひとつです。

「今借りる」判断ができる会社の2つの条件

ただし、「上がるならとりあえず借りておこう」という発想は禁物です。借入である以上、目的が伴わなければ意味がありません。今のタイミングで前向きに借入を検討できるのは、次の2つの条件を満たす会社です。

条件1:使い道が具体的に、近い将来で決まっている

設備投資でも運転資金でも、資金使途(何のために使うか)が具体的に決まっていることが大前提です。近い将来に確実に使う予定があるなら、その計画を銀行にきちんと説明したうえで、今のうちに借りておく判断は理にかなっています。

条件2:返済できる範囲に収まっている

「ちゃんと返せるか」の目安は、経常利益+減価償却費(年額)と、年間の返済額のどちらが上回っているかで確認します。

経常利益 + 減価償却費 > 年間返済額
年間の返済額を上回るお金がきちんと入ってくる状態を作れているかどうか。ここが「返せる・返せない」を判断する一つの目安です。

借入前に必ずチェックしておきたいポイントです。

逆に「待ったほうがいい」ケース

一方で、次のような状況では、無理に今動く必要はありません。まずは足元の土台を整えることを優先しましょう。

使い道がまだ固まっていない場合
「上がるから今のうちに」と焦って借りる必要はありません。目的が定まってから動いても遅くはありません。

直近で返済に充てられるお金がマイナスになっている(赤字の)場合
まずは土台の立て直しが先です。この状態では新規融資はもちろん、既存借入の条件変更(リスケジュール)中の会社にとっても、追加の調達は難しいのが実情です。

こうしたケースでは、無理に借入を増やすのではなく、財務の立て直しから着手していくのが順序です。

何から始めるべきか——まず「借入一覧表」をつくる

金利上昇局面で最初に取り組むべきは、自社の借入の全体像を「見える化」することです。現状把握の入口として、これが最もわかりやすい方法です。

借入一覧表に整理する項目

銀行ごと・借入ごとに、次の情報をまとめていきます。

確認項目 確認する内容
金融機関 どの銀行から借りているか
金利タイプ 変動金利か、固定金利か
金利 現在の金利は何%か
返済額 毎月の返済額はいくらか
最終返済期日 いつ返済が終わるのか
保証・担保 保証・担保はあるか、ないか

これらを種類別に一覧にするだけで、会社の今の借入状況が一目で見えるようになります。多くの会社が「作れそうで、作っていない」のがこの一覧表です。少し手間はかかりますが、作ることで現状がはっきりします。

一覧表ができると「打てる手」が見えてくる

現状が見えると、対策の選択肢が一気に増えます。

・返済期間の見直し

・複数の借入の一本化

・資金繰り・キャッシュフローの改善

・調達先の偏りの是正

・資本性劣後ローンなどの活用

・自己資本を厚くして借入を減らす方向

金利が上がるから「大変だ」と身構えるのではなく、慌てずに現状をしっかり把握することが先決です。そのうえで今後3年の資金繰りを重ね合わせ、調達の順番を決めていく。これができれば、金利上昇局面でもキャッシュを残していく対策は十分に取れます。

「とりあえず借りる」時代は終わった

コロナ禍やリーマンショックのように先行きが見えない局面では、「借りられるうちに借りておく」「手元に現金を厚くしておく」ことが基本戦略でした。国も、使い道が明確でなくても比較的柔軟に融資に応じてくれていました。

しかし局面は大きく変わりました。今は、厳しい会社に対して国も「もう貸さない」方向にあり、その反動として倒産件数も増加しています。

だからこそ、金利という新しい変数も踏まえ、目的と出口を明確にした資金調達が、これからの時代を生き残る条件になります。

いま着手すべき3つのアクション

1. 借入一覧表をつくる
銀行別に金利・返済額・期日・担保をまとめ、現状を見える化する。

2. 返済力を点検する
「経常利益+減価償却」と「年間返済額」を比較し、今の融資状況が適正かを確認する。

3. 調達の順番を設計する
今後3年の資金繰り予測に借入計画を重ね、「いつ・いくら・どの条件で」を決める。

シードコンサルティングでは、500社超の建設業支援の中で培った仕組みを用いて、こうした借入の見える化と戦略設計をサポートしています。

よくある質問(FAQ)

Q. 建設業の借入は、今すぐ実行すべきですか?それとも金利の動きを待つべきですか?

A. 使い道が具体的に決まっていて、返済できる範囲に収まっている会社は、今実行を検討する価値があります。金利が下がる材料は現状ほとんどなく、1年後のほうが金利は上がっている可能性が高いためです。一方、使い道が固まっていない場合や赤字の場合は、まず財務の土台を整えることを優先すべきです。判断の軸は金利そのものではなく、「借りる目的と出口が一致しているか」にあります。

Q. 金利3%で1億円を借りると、負担はどれくらい増えますか?

A. 年間の利息だけで300万円になります(元金の返済は別途)。営業利益率3%の会社なら、売上1億円を上げてやっと残る利益が300万円ですから、利息の支払いだけで相当な体力を使う計算です。借入を検討する際は、利息と元金返済の合計を、自社の利益で無理なく返せるかを必ず確認しましょう。

Q. 変動金利と固定金利、どちらで借りるべきですか?

A. 金利が今後さらに上がる前提に立つなら、長期の借入では固定金利が選択肢に入ってきます。特に10年・20年スパンの設備資金では、将来の金利上昇を織り込んで検討する必要があります。ただし固定は変動より当初の金利が高くなる傾向があるため、借入期間・返済計画・金利見通しを踏まえた個別判断が重要です。専門家にご相談のうえ、自社に合った組み方を検討されることをお勧めします。

Q. 借入一覧表には、具体的に何を書けばいいですか?

A. 銀行ごと・借入ごとに、「金融機関名」「変動/固定の別」「金利」「毎月の返済額」「最終返済期日」「保証・担保の有無」の6項目をまとめます。これだけで会社の借入の全体像が見え、返済期間の見直しや借換えの一本化など、打てる手が具体的に見えてきます。

Q. すでに赤字で返済が厳しい場合、新しく借りることはできますか?

A. 直近で返済に充てられる資金がマイナスの状態では、新規融資も既存借入の条件変更(リスケジュール)中の追加調達も、現実的には難しいのが実情です。この場合は無理に借入を増やすのではなく、まず財務の立て直し・土台づくりから着手する順序をお勧めします。シードコンサルティングでは、現状把握から再建の道筋づくりまで伴走支援を行っています。

この記事の著者

岡田 聡(おかだ さとし)

株式会社シードコンサルティング 代表取締役

建設・リフォーム業界の中小企業に特化した財務・事業承継・M&Aコンサルティングの専門家。20年以上にわたり500社超の建設業経営者を支援。100件以上の事業承継案件を手がけた実績を持つ。YouTube「建設業支援TV〜お金のミカタ〜」で業界の経営ノウハウを発信中。日本経営士協会 経営士、相続事業承継コンサルティング協会 エグゼクティブコンサルタント。

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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の融資判断・税務判断を保証するものではありません。実際のご検討にあたっては、金融機関や専門家にご相談ください。

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