会社をたたんでも家は守れる?経営者保証ガイドラインで生活を守る方法とは
カテゴリ:建設業経営
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会社を整理することになっても、家族の暮らしの土台である「自宅」まですべて失うとは限りません。
数億円の債務と個人保証を抱えたケースでも、「経営者保証に関するガイドライン」に沿って早く・誠実に動けば、自宅を残しつつ、残りの保証債務の免除を受けられる可能性があります。
本記事では、会社の出口局面で経営者と家族の生活を守るための「最後の砦」ともいえる経営者保証ガイドラインの仕組みと、使うための前提条件、そして「引き際」の見極め方について解説します。
残せる可能性
受けられる場合
選択肢
広げる鍵
経営者保証に関するガイドラインとは
中小企業団体・金融機関団体を事務局とする研究会が策定した、経営者の個人保証を公正に整理するためのルールブックです。一定の要件を満たせば、破産によらずに残りの保証債務の免除を受け、生活の基盤となる「華美でない自宅」などを手元に残せる可能性があります。
なぜ「会社をたたむ=家も失う」ではないのか
経営者は、大きなリスクを引き受けながら会社を経営しています。
業績の良い時もあれば、外部環境の変化などによって、やむを得ず会社を整理せざるを得ない局面もあります。
そのとき、多くの社長が「借金もあるし、個人保証もついている。会社をたためば、当然、家も全部持っていかれる」と考えてしまいます。
しかし、実際には必ずしもそうとは限りません。
会社を整理しても、自宅を残せる可能性があります
経営リスクを取ってきた経営者が、失敗した瞬間に生活基盤まで完全に失うことがないよう、一定の条件のもとで生活を守る仕組みが用意されています。
数億円の債務でも「家を守る」検討に入れた実例
シードコンサルティングが支援したあるケースでは、年商約9億円の製造業で、外部環境の変化などにより会社を整理する話になりました。
数億円の借入金を抱え、債務超過の状態で、当然ながら経営者の個人保証も付いていました。
当初は、経営者自身も「家も持っていかれる」という前提で考えていました。
しかし、専門家チームとともに手順を整理した結果、自宅を残せる可能性を含めた検討に入ることができました。
※本事例の数字や状況は、特定の企業が識別されないよう一部調整しています。また、経営者保証ガイドラインは業種を問わず中小企業に広く適用されうるため、建設業でも基本的な考え方は同じです。
経営者保証ガイドラインで「守れるもの」
経営者保証ガイドラインを活用した場合、破産による整理と比べて、手元に残せるものが変わる可能性があります。
主なポイントは、次の3つです。
1.生活の基盤となる「華美でない自宅」
ガイドラインに沿った整理では、破産の場合に残せる自由財産に加えて、経済合理性の範囲内で、一定期間の生計費に相当する現預金や「華美でない自宅」などを手元に残せる可能性があります。
ただし、残せる資産には上限があり、どのような自宅でも無条件で残せるわけではありません。
「華美でない自宅」であることが前提です
何億円もする高額な住宅をそのまま保有しながら、保証債務だけを免除してもらうという制度ではありません。あくまで、家族が生活するための基盤として相応な範囲で検討されます。
「華美でないか」の判断には個別事情が関係するため、実際の適用については専門家による確認が必要です。
2.残った保証債務の免除
一定の要件を満たして整理を進めた場合、残存資産を除く資産を処分・換価して債権者に弁済したうえで、残った保証債務について免除を受けられる場合があります。
つまり、個人保証の金額が大きいからといって、「一生かけてすべて返し続けなければならない」とは限りません。
保証債務が残っている=すべて終わり、ではありません
適切な手順で債権者との整理を進めることで、残債の免除を含めた出口を検討できる場合があります。
3.信用情報に登録されない
自己破産をすると、いわゆるブラックリストに載り、その後の金融機関からの借入などに支障が出ることがあります。
一方、経営者保証ガイドラインに沿って保証債務を整理した場合は、信用情報に登録されない扱いとされています。
次の事業への再チャレンジという観点でも、破産との大きな違いです。
破産ではなく「破産によらない整理」を選ぶという発想
多くの経営者は、会社が苦しくなっても、最後の最後まで何とか立て直そうと頑張ります。
しかし、資金が完全にショートするまで粘り、結果として自己破産しか選択肢がなくなると、守れるものは大きく減ってしまいます。
そこで知っておきたいのが、「破産によらない整理」という考え方です。
経営者保証ガイドラインを使い、破産手続による配当よりも多くを債権者へ返せる見込みがあれば、自宅を残しながら残った保証債務の免除を受けられる可能性が出てきます。
ポイントは「破産よりも債権者にとって合理的か」
債権者にとっても、破産して回収できる金額が少なくなるより、早い段階で整理を進めてより多く回収できる方が合理的です。この納得感を作れるかどうかが重要になります。
なぜ「早く・誠実に」が決定的に重要なのか
経営者保証ガイドラインを活用するうえで、最も重要なのが「早めに、そして誠実に動くこと」です。
整理への着手が早いほど、会社や経営者の資産が目減りする前に対応できるため、債権者が回収できる金額も増える可能性があります。
ガイドラインでは、破産した場合と比べてどれだけ多く債権者へ返済できるかという「経済合理性」が重要になります。
早く決断するほど、残せる選択肢が広がる可能性があります
整理への着手が遅れれば遅れるほど資産が目減りし、債権者への返済原資も減っていきます。その結果、自宅など生活基盤を残す余地も小さくなってしまいます。
債権者の側から見ても、このまま資金が完全に尽きて破産されるより、まだ資産が残っている段階で整理を行い、少しでも多く回収できる方が合理的です。
「破産するより、この整理方法の方が債権者にとっても合理的だ」と理解してもらえる状況を作れるかどうかが、大きなポイントになります。
実際の進め方――いきなり会社をたたむわけではない
経営が苦しくなったからといって、すぐに会社を整理するわけではありません。
実務では、まず会社や事業を生かせる可能性がないかを検証し、そのうえで難しいと判断された場合に、整理や事業再生の選択肢を検討します。
ステップ1:まず「生かせないか」を検証する
最初に行うのは、会社を再建できる可能性が残っていないかを確認することです。
グループ会社がある場合には、経営資源を集中させる、採算の悪い事業を縮小する、資産を売却して資金を確保するなど、さまざまな再建策を検討します。
再建できる可能性が少しでもあるのであれば、まずはその道を優先します。
経営者保証ガイドラインは「すぐ会社をたたむための制度」ではありません
まず再建可能性を検証し、どうしても難しい場合に、経営者と家族の生活、事業、従業員をできるだけ守るための出口として検討します。
どうやっても事業継続が難しいと判断された段階で、次の選択肢を考えます。
ステップ2:第二会社方式で「事業と雇用」を守る
再建が難しい場合の事業再生手法の一つが、「第二会社方式」です。
第二会社方式とは、事業を受け継ぐ新しい会社を用意し、収益性のある事業や必要な資産、従業員などをその会社へ移すことで、事業そのものを残していく方法です。
第二会社方式のイメージ
旧会社:過大な負債などを整理する
新会社:事業・人材・必要な資産などを引き継ぎ、事業継続を目指す
イメージだけで見ると「負債だけを残して逃げるのではないか」と誤解されることがありますが、適正な手続きによって事業を生かすために使われる再生手法です。
事業と社員を守りながら、旧会社の負債を整理していく。その過程で経営者保証ガイドラインも活用し、経営者個人の保証債務や自宅をどう扱うかを検討していきます。
会社を残せなくても、事業や雇用を残せる場合があります
「会社を守る」ことだけではなく、「事業を守る」「従業員を守る」「経営者と家族の生活を守る」という複数の視点から、最適な出口を考えることが重要です。
絶対にやってはいけない「直前の名義変更・資産隠し」
経営者保証ガイドラインを活用して生活基盤を守ろうとする場合、大前提となるのが「隠し事をしないこと」です。
とくに避けなければならないのが、会社の整理が見えてきた段階で、自宅や預金などの資産を家族名義へ変更する行為です。
自宅を守るために家族名義へ変える――これは逆効果になる可能性があります
整理直前の資産移転は、債権者を害する目的の財産移転と判断される可能性があり、自宅を守るどころか、ガイドラインによる整理そのものに悪影響を及ぼします。
実際の整理では、直前だけではなく、それ以前の資産の動きまでさかのぼって確認されます。
「自分の財産だから、今のうちに移しておこう」と自己判断することは避ける必要があります。
資産を守りたいなら、動かす前に専門家へ相談する
自宅、不動産、預金、保険などの扱いには法務・税務上の判断が必要です。自己判断で資産を移動させず、必ず専門家と相談しながら進めることが大前提です。
経営者保証ガイドラインを使った整理や第二会社方式は、税務、法務、財務、金融機関との調整など、複数の専門領域が絡みます。
シードコンサルティングでも、税理士・弁護士をはじめ、財務、適正な整理、第二会社方式、M&A支援など、それぞれの専門家とチームを組みながら対応しています。
「引き際」を見極める――いますぐ意識すべき3つのこと
経営者保証ガイドラインを活用するうえで、制度そのもの以上に重要なのが、「いつ動くか」です。
会社を立て直せる可能性を探りながらも、選択肢が残っているうちに出口を考える。そのために、次の3つを意識してください。
「苦しいかも」と感じた、まだ余力があるうちに相談する
本当に気力が尽きるほど追い込まれてからでは、相談すること自体が難しくなります。まだ体力も資金も残っている段階の方が、再建・事業譲渡・第二会社方式・保証債務整理など、選べる道は多くなります。
危険なサインを見逃さない
大きな支払いの目処が立たない、返済条件の変更を考え始めている、個人保証の不安で眠れない、事業の先がまったく見えない。こうしたサインが出てきたら、経営者保証ガイドラインを含む出口戦略を検討するタイミングです。
1人で抱え込まない
引き際の判断には、家族や従業員の生活も関わります。感情も絡むため、経営者1人では決めきれないことも珍しくありません。自己判断で対策を進めず、専門家と一緒に選択肢を整理することが大切です。
「最悪でもこの道がある」と知っておくこと自体が、経営を続ける支えになります
すぐに会社をたたむという話ではありません。再建できる可能性を探りながら、万一の場合に選べる道を知っておくことが重要です。
建設業経営者に伝えたいこと
会社の出口局面では、「会社を残すこと」だけが正解ではありません。
事業や従業員を残すこと、経営者と家族の生活基盤を守ること、そして再チャレンジできる状態を残すことも、大切な経営判断です。
経営者保証ガイドラインは、そのために検討できる選択肢の一つです。
ただし、使える選択肢は時間とともに減っていきます。「まだ何とかなる」と思える段階だからこそ、現状を数字で確認し、専門家と一緒に次の道を考えることが重要です。
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よくある質問(FAQ)
Q. 会社をたたんだら、自宅は必ず失うのですか?
A. 必ずしもそうとは限りません。経営者保証に関するガイドラインに沿って、破産によらない整理を早めに進めた場合、生活の基盤となる「華美でない自宅」などを残せる可能性があります。ただし、残せる資産には上限があり、個別の要件を満たす必要があります。
Q. 経営者保証ガイドラインを使うと、ブラックリストに載りますか?
A. 自己破産の場合と異なり、ガイドラインに沿って保証債務を整理した場合は、信用情報に登録されない扱いとされています。次の事業への再チャレンジという点でも、破産とは大きな違いがあります。
Q. なぜ「早めの相談」がそれほど重要なのですか?
A. 整理への着手が早いほど、会社や個人の資産が残っているため、債権者への返済原資を確保しやすくなります。その結果、生活基盤として残せる範囲も広く検討できる可能性があります。資金が完全に尽きてからでは、選択肢が大きく減ってしまいます。
Q. 整理の前に、自宅の名義を家族に移しておいた方がよいですか?
A. 自己判断での名義変更は避けてください。整理直前の資産移転は、債権者を害する行為と判断される可能性があり、かえって自宅を守れなくなるおそれがあります。資産を動かす前に、必ず弁護士などの専門家へ相談する必要があります。
Q. 会社を残せなくても、事業だけを残す方法はありますか?
A. 再建が難しい場合の手法として、第二会社方式があります。受け皿となる会社へ事業や必要な資産、人材を移し、旧会社の負債を整理することで、事業と雇用を残せる可能性があります。実行には税務・法務・財務が複雑に絡むため、専門家チームでの対応が前提になります。
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この記事の著者
岡田 聡(おかだ さとし)
株式会社シードコンサルティング 代表取締役
建設・リフォーム業界の中小企業に特化した財務・事業承継・M&Aコンサルティングの専門家。20年以上にわたり500社超の建設業経営者を支援し、100件以上の事業承継案件を手がける。YouTube「建設業支援TV〜お金のミカタ〜」で業界の経営ノウハウを発信中。株式会社シードコンサルティングは認定経営革新等支援機関の認定を受けている。日本経営士協会 経営士、相続事業承継コンサルティング協会 エグゼクティブコンサルタント。
※本記事は一般的な情報提供を目的として作成しており、個別の法務・税務判断を保証するものではありません。経営者保証ガイドラインの適用可否、保証債務整理、第二会社方式、資産の取り扱いなどは個別事情によって異なります。実際の判断・手続きにあたっては、必ず弁護士・税理士等の専門家へご相談ください。
