建設業の事業承継を「先延ばし」にするとどうなる?病気・財務危機が重なった創業社長のリアル事例を専門家が解説

カテゴリ:建設業経営

この記事はYouTube動画をもとに作成しています

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事業承継を「まだ元気だから」と先延ばしにすると、財務危機・社長の病気・相続といった問題が一度に押し寄せ、打つ手が極端に狭まります。

実際、2024年に「経営者の病気・死亡」を理由とした倒産は316件と過去最多を記録。社長の平均年齢は60.8歳と35年連続で過去最高を更新し続けており、「不測の事態」はもはや誰にでも起こりうるリスクです。

本記事では、30年かけて年商20億円規模のグループを築いた創業社長が、業績悪化による事業再生のさなかに突然病に倒れ、事業承継・財務・相続のすべてに同時に向き合うことになった実例をもとに、「元気なうちに準備する」ことがなぜ最大の対策になるのかを解説します。

316件
経営者の病気・死亡
倒産件数
60.8歳
社長の
平均年齢
20億円
事例企業の
年商規模
3つ
今すぐ
やるべきこと

事業承継の「先延ばしリスク」とは
まだ余裕があるうちに承継準備を後回しにした結果、経営者の高齢化や突然の病気・財務悪化が重なり、本来選べたはずの選択肢を失ってしまう構造的なリスクを指します。事業承継は「いつかやること」ではなく、今日から備えるべき経営課題です。

なぜ建設業の事業承継は「先延ばし」が最も危険なのか

事業承継で取り返しがつかなくなる典型が、「まだ大丈夫」と判断を先送りし続けた末に、複数の問題が同時に噴き出すパターンです。

社長の高齢化と「経営者の病気・死亡」リスク

帝国データバンクの調査によると、社長の平均年齢は2025年で60.8歳と、35年連続で過去最高を更新しています。一方で社長交代率は低水準にとどまり、世代交代が追いついていません。

見過ごせないのが、「経営者の病気・死亡」を原因とする倒産が2024年に316件と過去最多を記録したという事実です。経営者が高齢になるほど「不測の事態」が起こる確率は高まり、それは企業の存続に直結します。

優秀な経営者ほど引き際が難しい

グループ会社を一代で築き上げるような優秀な創業社長ほど、引き際の判断が難しくなります。自分が築いてきたものへの思い入れが強く、「もう少し回復させてから息子に渡したい」という気持ちが働くからです。

「もう少し」が最大の落とし穴
もう少し業績が戻ってから。もう少し落ち着いてから。もう少し息子が成長してから。その気持ちは自然です。しかし、健康や外部環境は待ってくれません。ここが事業承継の怖いところです。

グループ経営は「連鎖リスク」を抱えている

事業を拡大してグループ企業を複数持つ会社では、リスクも連鎖します。一社の業績が悪化すると、関連する他社にも波及する。資金繰りが詰まると、社員の動揺や過去の問題まで一気に表面化する。平時には見えなかった綻びが、危機の局面で同時に噴き出すのです。

再生・病気・承継が一度に押し寄せた創業社長の実例

ここからは、財務コンサルタントとして現場で支援しているメンバーが向き合った実際のケースを紹介します。なお、特定を避けるため、内容は一部デフォルメしています。

30年で年商20億円のグループを築いた創業社長

舞台は、創業から約30年、一代で年商20億円規模のグループ企業へと育て上げた会社です。事業拡大に伴って複数のグループ会社を持ち、社長は地元では名士として知られる存在でした。

60代に入り、社長には後を継ぐ息子さんもいたため、「グループで築いた会社を息子に引き継ぐ」というプランは元々描かれていました。

業績悪化、事業再生フェーズ、そこに突然の病

しかし時代の流れに追いつけず、業績は次第に悪化。資金調達もままならなくなり、グループの一社は各金融機関とやり取りをする「事業再生」のフェーズに入りました。

社長としては、「なんとか回復させてから息子に渡したい」という思いが強かったのだと思います。しかし、まさにそのさなかに、社長が突然病に倒れ、自分で物事を動かせない状態になってしまいました。

危機は順番に来てくれない
事業承継を急がなければならない。再生も進めなければならない。だが、その指揮を執るべき本人が動けない。先のことを考える余裕もないまま、すべてが同時に押し寄せてきたのです。

対策会議で流された涙

弁護士をはじめ複数の専門家が集まる対策会議の場で、社長は涙を流し、「申し訳ない」と言葉を詰まらせたといいます。

今まで何でも自分で決め、自分でやってきた経営者が、人に頼らざるを得ない。みんなに迷惑をかけてしまった。息子に重荷を背負わせることになる。そうした無念さと苛立ちが、その一言に凝縮されていました。

危機が同時に来たとき、専門家チームは何をするのか

このような局面で大切なのは、一人の力で抱え込まないことです。シードコンサルティングがこのケースで担っているのは、財務の立て直しを軸に、資金繰り・資金調達、事業承継対策としての株式の移転、そして事業再生の対策までを並行して進めることです。

ただし、これらは一社・一人で完結できるものではありません。弁護士、税理士など各分野の専門家をチームとしてコーディネートし、それぞれの論点を関連づけながら同時に動かしていく。この座組みが、複雑に絡み合った危機をほどく鍵になります。

危機対応は、本来「危機が来る前」に始めるもの
シードコンサルティングは20年以上にわたり500社超の建設業を支援し、100件超の事業承継案件に関わってきました。その経験から断言できるのは、元気なうちに、いい形で次の世代へバトンを渡す準備をしておくことに勝る対策はない、ということです。

今すぐ着手すべき3つのアクション

① 今日から承継を考え始める

事業承継は「いつかやること」ではありません。元気で、意思表示ができる今こそが、最も多くの選択肢を持てる時間です。

② 財務・株式の現状を棚卸しする

グループ各社の財務状況、資金繰り、株式の保有・移転の状況を把握する。連鎖リスクの芽を平時のうちに確認します。

③ 「もしも」に備えた体制を用意する

万が一動けなくなったときに誰が何を判断するか。信頼できる専門家チームとの接点を、危機の前に持っておくことが安心につながります。

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よくある質問(FAQ)

Q. 事業承継はいつから準備を始めるべきですか?

A. 「今日から」始めることをお勧めします。事業承継は短くても数年単位の準備期間を要し、やり直しがききません。元気で意思表示ができるうちに動き始めることが最善の対策です。

Q. 後継者がいれば、事業承継の準備は急がなくてよいのでは?

A. 後継者がいても、準備は別問題です。後継者が決まっていても、社長が突然動けなくなれば、株式の移転や財務の整理が間に合わず、承継そのものが止まってしまうことがあります。

Q. 業績が悪化していても、事業承継はできますか?

A. できますが、選択肢は狭まります。業績悪化と事業再生が進んだ段階では、財務の立て直し・資金繰り・株式対策・再生対策を同時に進める必要があり、対応の難易度が大きく上がります。

Q. グループ会社を複数持っている場合、何に気をつけるべきですか?

A. 連鎖リスクに注意が必要です。グループ各社は関連し合っているため、一社の悪化が他社に波及しやすい構造です。各社の財務状況を平時から把握し、グループ全体での承継・再生の道筋を描いておくことが大切です。

Q. 社長が病気で動けなくなった場合、何から手をつければよいですか?

A. まずは一人で抱え込まず、財務・法務・税務の専門家でチームを組むことです。財務の立て直しと資金繰りを軸に、株式の移転や再生対策を並行して進める必要があります。

この記事の著者

岡田 聡(おかだ さとし)
株式会社シードコンサルティング 代表取締役
建設・リフォーム業界の中小企業に特化した財務・事業承継・M&Aコンサルティングの専門家。20年以上にわたり500社超の建設業経営者を支援。100件以上の事業承継案件を手がけた実績を持つ。YouTube「建設業支援TV〜お金のミカタ〜」で業界の経営ノウハウを発信中。日本経営士協会 経営士、相続事業承継コンサルティング協会 エグゼクティブコンサルタント。
https://seed-consulting.jp/

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