建設業のスポンサー型M&Aとは?80億円事業を670万円で承継したアエラホーム事例を解説

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「経営が行き詰まった建設会社の事業は、もう残せないのか?」——結論から言えば、残せます。

負債61億6000万円を抱えて民事再生を申請したアエラホームは、約80億円規模の注文住宅事業を670万円で新会社に承継させ、従業員207名の雇用・全国19店舗・施主との契約を守りました。

本記事では、この「スポンサー型M&A(第二会社方式)」の仕組みと、中小建設業の社長がいまから準備すべきことを、建設業支援500社超の私たちシードコンサルティングが解説します。

スポンサー型M&A(第二会社方式)とは、
経営が悪化した企業の「生きている事業」だけを新会社へ移し、過大な負債は旧会社に残して法的に整理することで、雇用・取引先・顧客を守りながら事業を存続させる、事業再生型の承継手法です。

61.6億円
民事再生時の
負債総額
約80億円
承継された
注文住宅事業
670万円
公開情報による
承継費用
207名
引き継がれた
従業員

アエラホームで何が起きたのか?

2026年7月16日、注文住宅で全国に知られたアエラホームが東京地裁に民事再生手続の開始を申し立てました。まず押さえておきたいのは、これは公開情報(上場企業であるロゴスホールディングスの適時開示等)を基にした整理であり、本記事にはそのうえでの私たちシードコンサルティング独自の見解も含まれる、という点です。

民事再生申請と負債61億6000万円の重み

負債総額は約61億6000万円。債権者は金融機関4先に加え、取引業者等を含めると約560先にのぼるとされています。

ここが建設業ならではの怖さで、1社が止まると、施主・協力業者・材料店まで一気に影響が連鎖します。途中まで建てていた家が止まる、下請けにお金が入らない——こうした二次被害が現実に起こり得るわけです。

アエラホームは1963年に山梨県で創業し、フランチャイズ展開を通じて全国に知名度を広げてきた住宅会社です。主力は「フルオーダーの注文住宅」、そして看板技術は「外張りダブル断熱住宅」。従業員は207名を数えました。

約80億円の注文住宅事業が670万円で承継された仕組み

倒産してすべてが消えたわけではありません。ポイントは、負債は大きくても「事業そのものは生きていた」ことです。

約79億8000万円(およそ80億円規模)の注文住宅事業を対象に、ロゴスホールディングスが100%出資して設立した新会社「LHD-1」へ、吸収分割という形で事業を移しました。

この新会社は2026年10月1日にアエラホームへ商号を変更し、現社長が引き続き経営を担う予定とされています。

承継の費用は公開情報で670万円。約80億円規模の事業を、この金額で引き継ぐ形になっています。

「そんな金額でいいのか」と驚かれるかもしれませんが、これは裁判所や監督委員等の協議を経て、コストやリスクを精査したうえで定まった額です。

引き継がれたもの・残されたもの

第二会社方式の核心は、「何が新会社に移り、何が旧会社に残るか」という切り分けにあります。

新会社に引き継がれたもの 旧会社に残されるもの
・注文住宅事業(約80億円規模)
・施主との新築請負契約
・仕掛かり中の物件
・アフターサービス
・従業員207名の雇用
・全国19店舗の営業拠点
・断熱技術などの資産
・大きくふくらんだ金融債権をはじめとする負債
・注文住宅以外の事業
・リフォーム事業
・フランチャイズ事業など

結果として、施主と従業員は守られ、金融機関や一部の取引先は損失を負担する——そういう形の再生スキームになっています。

なぜアエラホームは行き詰まったのか?

公開情報から読み解くと、原因は一つではなく、いくつかの構造要因が重なっています。実際の内情は当事者にしか分からない部分もあるため、以下はあくまで公開情報に基づく私たちの見立てです。

「注文住宅一本足」経営のリスク

最も分かりやすいのは、注文住宅というひとつの柱に依存していたことです。調子がいい時期はこの一本足でぐんぐん伸びます。しかし住宅着工が減る局面に入ると、その柱がそのまま重荷に変わってしまう。上りのエスカレーターが逆回転を始めると、一本足はもろい、というのが現場感です。

全国19店舗の固定費と「利益なき成長」

フランチャイズから独立し、九州まで自社ブランドで全国展開を進めるなかで、店舗の固定費がどんどん積み上がっていきました。売上は伸びても利益がついてこない、いわゆる「利益なき成長」です。

実際、2024年前後には売上90億円規模に対して約5億円の営業損失を計上した年もあったとされます。ピーク時の2013年3月期は売上約210億円、直近の2026年5月期は約55億円まで縮小しています。差別化投資が先行し、利益率が薄いまま規模を追った——その構図が読み取れます。

黒字でも倒産する——資金繰り悪化の正体

見落とされがちですが、直近期は利益が出ていた時期もありました。それでも民事再生に至ったのは、キャッシュアウトの方が大きかったからです。

利益が出ているから倒産しない、ではありません。
黒字でもキャッシュが尽きれば、会社は立ち行かなくなります。

未成工事支出金のように「先に出ていくお金」を含めて資金繰りを細かく見ていたか——ここがアエラホームの結果から読み取れる、最も重い教訓です。

なぜ工務店の倒産が増えているのか?

このケースはアエラホームだけの問題ではありません。中小のホーム店・工務店にも、同じリスクがじわじわと広がっています。

資材価格の高騰は「引き金」ではない

「ナフサショックで資材価格が上がったから潰れたのでは」という声をよく聞きます。もちろん資材や人件費の高騰は経営を圧迫する要因の一つです。

ただ、少なくとも今回のケースでは、足元の資材高騰そのものが直接の引き金になったというより、もっと構造的なところに原因があった、というのが私たちの見方です。根っこにあるのは、販売不振と赤字の累積です。

4号特例の縮小がじわじわ効く「資金繰り」への影響

建設業ならではの要因として見逃せないのが、建築基準法の改正、いわゆる「4号特例の縮小」です。改正前は一定の木造住宅について構造審査などが簡略化され、着工までが早く、結果としてキャッシュ化のタイミングも早められました。ところが審査対象が広がると、確認に時間がかかり、着工とキャッシュインが後ろにずれていきます。

たとえば、これまで数日単位で進んでいた確認が、法的審査を要して1か月前後かかるようになれば、その分だけ入金が遅れる可能性があります。一方で、大工の手間・外注費・材料費といった「先に出ていくお金」は待ってくれません。

この入りと出のズレが、工務店の資金繰り悪化や倒産の背景で、じわじわと効いてきているのです。

※審査に要する日数や運用は案件・地域により異なります。詳細は所管の建築主事や専門家にご確認ください。

スポンサー型M&A(第二会社方式)とは何か?

ここからが本記事の核心です。今回のアエラホームは、スポンサーが「第二会社方式」と呼ばれるスキームを使って事業を引き継いだ事例です。

新会社に「事業」を移し、旧会社に「負債」を残す

仕組みはシンプルです。スポンサー(今回はロゴスホールディングス)が100%出資する新会社を立て、そこへ生きている事業だけを吸収分割で移します。旧会社には過大な負債を残し、法的整理で処理していきます。

新会社
生きている事業・従業員・顧客との契約などを引き継ぐ

旧会社
過大な負債を残し、法的整理で処理する

新会社は負債を引き継がないため、簿外債務や長期保証にまつわるリスクも切り離せる、という点が大きなメリットです。

「新しい会社に事業だけ移して、負債は置いていく——そんなことが成り立つのか」と思われるかもしれません。成り立つのは、裁判所の監督のもとで、債権者への説明と手続きを踏んで進めるからです。だからこそ、法的な整理の専門性が問われます。

DIPファイナンスで事業を止めずに立て直す

事業を止めてしまえば価値は失われます。そこで、立て直しまでの運転資金として、スポンサーからのDIPファイナンスが新会社に注入され、事業を止めずに、また利益を生むところまで回していく設計になっています。

今回のDIPファイナンスは約3億円とされています(公開情報)。従業員の給与も、協力業者への支払いも、ここで確保されるわけです。

なぜロゴスHDはスポンサーに名乗り出たのか

ロゴスホールディングスは東証グロース上場の注文住宅グループで、北海道を発祥に全国へ展開し、連結売上は約500億円規模、営業利益もしっかり出している会社です。同じ住宅業界でも、伸びる会社と傾く会社に分かれる——その差を象徴する組み合わせでもあります。

スポンサーに入る狙いは、公開情報からも読み取れます。ひとつは「時間を買う」ことです。

自前の出店は年に数店舗ペースですが、19店舗・207名の基盤を一気に取り込めば、拡大スピードは桁違いに上がります。

もうひとつは、60億円超の負債を法的整理で切り離せたからこそ、この条件で引き継げたという点です。さらに、ロゴス側が元々もつ断熱技術と、アエラホームの外張りダブル断熱の親和性も高い。

業績が良い時は高い価値がつきますが、ここまで厳しくなると「事業はあるが値はつかない」状態になります。再生に慣れた会社にとっては、むしろ良い条件で引き受けられる——そういう構造です。

ロゴス側はこうした再生・立て直しのノウハウを過去にも複数社で積んでおり、「十分に再生できる」という見立てのもとで参入したものと思われます。

建設業の事業承継における私たちの支援実績

私たちシードコンサルティングは、建設・リフォーム業界の中小企業に特化し、20年以上にわたって500社超の建設業経営者を支援し、100件を超える事業承継案件を手がけてきました。今回のような再生局面での承継は、専門家がチームで入って初めて成立します。

正直に申し上げると、今回のアエラホームのような大型案件は専門家チームが動きます。しかし、年商10億円未満の会社が同じように選択肢を検討できているかというと、実情としてはほとんど手が回っていません。だからこそ私たちは、この「新しい事業承継のあり方」を、建設業の現場サイズに合わせて数多くお手伝いしてきました。

まとめ:どんな最悪の状況でも、事業を生かす選択肢はある

今回のアエラホームの事例から、私たちが受け取るべきメッセージは希望です。これだけの負債を抱えても、施主・従業員・取引という「残せるもの」を最小限のダメージで残せた。会社を畳むことと、事業を畳むことは、別なのです。

そして、これはアエラホームほどの規模でなくても同じです。年商3億円の工務店でも、1億円の工務店でも、お客様がいて事業が動いている限り、負債をどう整理して事業を生かすか——その道は存在します。

大切なのは、「そういうやり方があると知っている」こと。

ただし、今回のアエラホームは債務超過まで転落し、スポンサーをつけるしか道がない段階まで来ていました。本来は、もっと手前で打てる手があったはずです。

だからこそ、黒字で体力があるうちに、資金繰り管理をより細かく行い、未成工事支出金などの動きも含めて確認する。そして出口の期限を決めて準備しておくことが重要です。

M&A・親族内承継・スポンサー型など、複数の選択肢を早めに並べて検討しておく。これが、今回いちばんの学びだと考えています。

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、法的・税務的な助言ではありません。個別の判断にあたっては、状況に応じて弁護士・税理士等の専門家にご相談ください。

よくある質問(FAQ)

Q. 第二会社方式を使うと、社長は経営を続けられますか?

A. ケースによりますが、続けられる可能性があります。今回のアエラホームでも、新会社(旧LHD-1)へ事業を移したうえで、現社長が引き続き経営を担う形が予定されています。誰が新会社の経営を担うかは、スポンサーとの合意や再生計画によって決まります。私たちシードコンサルティングでも、社長の意向を起点に、経営体制を含めた設計をお手伝いしています。

Q. 大きな負債があっても、事業を引き継いでもらえますか?

A. 可能性はあります。第二会社方式では、生きている事業だけを新会社に移し、過大な負債は旧会社に残して整理します。今回も約61億6000万円の負債は引き継がず、約80億円規模の事業だけが承継されました。ただし成立には、事業に価値があること、スポンサーや運転資金の手当てがつくこと、裁判所の監督下で手続きを踏むことが前提になります。負債額そのものよりも「事業が生きているか」が鍵です。

Q. 黒字なのに資金繰りが厳しいです。倒産のリスクはありますか?

A. あり得ます。アエラホームも直近期に利益が出ていた時期がありながら、キャッシュアウトが上回って民事再生に至りました。黒字でもキャッシュが尽きれば会社は止まります。特に建設業は未成工事支出金など「先に出ていくお金」が大きいため、損益だけでなく資金繰りを細かく見ることが重要です。私たちは月次伴走型の「財務の右腕」で、こうした資金繰りの早期把握を支援しています。

Q. 年商が数億円規模の工務店でも、スポンサー型M&Aは可能ですか?

A. 規模が小さくても、考え方は同じです。お客様がいて事業が動いていれば、事業を生かす選択肢はあります。実情として、年商10億円未満の会社ではこうした検討がほとんど進んでいませんが、それは「知られていない」だけであることも多いのです。私たちは建設業に特化し、現場サイズに合わせた承継・再生の設計を数多く手がけています。

Q. 事業承継の準備は、いつから始めるべきですか?

A. 早ければ早いほど選択肢が増えます。黒字で純資産に余力があるうちなら、M&A・親族内承継・スポンサー型など幅広い選択肢を検討できます。赤字が続き、債務超過の手前まで来てしまうと、打てる手はどんどん狭まります。これは時間との勝負です。まずは資金繰り管理と出口の期限設定から始めるだけでも、見える選択肢が変わってきます。私たちの「事業承継ドック」では、建設業に特化した承継診断で現状の選択肢を可視化しています。

この記事の著者

岡田 聡(おかだ さとし)

株式会社シードコンサルティング 代表取締役

建設・リフォーム業界の中小企業に特化した財務・事業承継・M&Aコンサルティングの専門家。20年以上にわたり500社超の建設業経営者を支援。100件以上の事業承継案件を手がけた実績を持つ。YouTube「建設業支援TV〜お金のミカタ〜」で業界の経営ノウハウを発信中。日本経営士協会 経営士、相続事業承継コンサルティング協会 エグゼクティブコンサルタント。

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