建設業の借入は、いくらまでなら返せる?社長が見るべき「2つの数字」を専門家が解説

自社の借入が「返せる範囲」に収まっているかは、たった2つの数字を並べるだけで分かります。

① 1年間で返している元金の合計と、② 去年の経常利益に減価償却費を足した金額。この2つを比べれば、借入が減っていく会社なのか、返すためにまた借りている会社なのかがはっきりします。

金利がほぼゼロだった時代は、足りなければ借りて回す、という経営が成り立ってきました。しかし借りるたびに利息という荷物が乗る今、「返せる範囲を知らないまま借りていること」が経営の重荷に変わり始めています。

本記事では、500社超の建設業を支援してきたシードコンサルティングが、専門的な分析を使わずに自社の返済力を確かめる方法を解説します。

建設業の返済能力とは、
1年間で返済にあてられるお金(経常利益+減価償却費)が、その年に返す元金を上回っているかどうかで測る、借入とキャッシュフローのバランスのことです。シードコンサルティングでは、この2つの数字を社長自身が言えるかどうかを、財務体質を見分ける最初の入口として位置づけています。

なぜ今、「借りて回す」経営が重くなるのか

利息ゼロの時代が終わった

多くの建設会社は、「今月、回るのか」「来月の支払いは足りるのか」を毎月考えながら経営しています。足りないとなれば、金利がどうこうより先に、とりあえず借りて回していく。この繰り返しでやってきた会社は少なくありません。

私たちは、それを悪いこととは思っていません。会社を止めないこと。それが社長にとって、何より優先される仕事だからです。

ただ、この輪がこれまで回ってきたのは、利息がほとんどゼロだったからです。たとえば借入1億円に金利3%がつけば、利息だけで年300万円。これからは、借りるたびに利息という荷物が上乗せされていきます。

「足りないから借りる」の輪が重くなる

足りないから借りる。借りたから返済が増える。返済が増えたから、また足りなくなる。この輪が、利息の分だけ少しずつ重くなっていきます。

一方で、まったく違う動きをしている会社もあります。借入の比率を下げ、自己資本を厚くし、返済の予定を社長が自分でつかんでいる会社です。

派手なことは何もしていません。毎月いくら返していて、いつ返し終わるのかを社長自身が言える、というだけの違いです。

この差が、これから数年で大きく開いていくと私たちは見ています。これは賢いか賢くないかの話ではありません。あえて言えば、忙しさの話です。現場に出て、人を回して、見積もりを出して、銀行に説明して……。この合間に借入を整理する時間など、普通は取れません。忙しい会社ほど後回しになる、というだけのことです。

返済力を測る「2つの数字」

むずかしい分析も、専門的な指標もいりません。次の2つの数字を紙の上に並べるだけです。

① 1年間で返している元金の合計

まず、1年間で返済している元金(利息を除いた元本部分)の合計を出します。これが「年間の返済額」です。

② 去年の経常利益+減価償却費

これが「1年間で返済にあてられるお金」です。なぜ経常利益なのかには、理由があります。

経常利益は、利息を払ったあとに残る利益だからです。

つまり金利が上がれば、この金額はそのまま減ります。金利上昇は、返せる力そのものを目減りさせるということです。

減価償却費のほうは、実際にお金が出ていかない費用なので、これも返済に回せます。だから経常利益に足し戻します。

2つを並べて分かること

この2つを比べたとき、判断はシンプルです。

② 返済にあてられるお金 > ① 年間の返済額
→ 借入は年々減っていく方向に向かっています。

② 返済にあてられるお金 < ① 年間の返済額
→ 返すためにまた借りている状態、ということになります。

銀行が見ているのも、実は同じ数字

ここでもうひとつ、銀行が融資判断のときに必ず見ている数字をお伝えします。

借入の残高が、この「返済にあてられるお金」の何年分にあたるか、という数字です。一般に「債務償還年数」と呼ばれます。

債務償還年数 = 借入残高 ÷(経常利益+減価償却費)

この年数が10年を超えてくると、銀行の見方が変わってくると言われています。

注目していただきたいのは、社長が見るべき数字と、銀行が見ている数字が、実は同じだということです。自分で計算できるのに、これまで見てこなかっただけとも言えます。

「うちは足りていない気がする」と感じたら

「たぶん、うちは足りていない気がする」「でも、はっきり出すのが少し怖い」——そう感じられる社長もいらっしゃると思います。

ですが、これは終わりの話ではありません。数字が分かった時点から、打てる手はいくつも出てきます。

打てる手はいくつもある

返済の期間を延ばしてもらう
リスケジュールにより、1年あたりの返済額を軽くする

何本もある借入を一本にまとめる
借入の一本化で、返済管理と条件を整理する

固定で借りられる先を増やしておく
日本政策金融公庫のような固定金利の先を確保しておく

どれも、動ける体力があるうちにしかできない打ち手です。そして今は、まだ十分に動ける時期だと私たちは見ています。

シードコンサルティングの現場から

500社超の建設業を支援してきた現場でよく見るのは、決算書は毎年見ているのに、「返済にあてられるお金が年間返済額を上回っているか」までは確認できていない、というケースです。

数字そのものは決算書の中にすべてあります。あとは、それを2つ並べて見るかどうかだけの違いです。

私たちが月次伴走型でお手伝いする「財務の右腕」では、まさにこの返済力の可視化から入り、必要に応じて返済条件の見直しや借入の組み替えまで、社長と一緒に手を動かしていきます。

まとめ:借りられるから借りる、から、返せるから借りる、へ

借入が多いこと自体は、悪いことではありません。

返せる範囲を知らないまま借りていることが、これからは重くなります。

借りられるから借りるのではなく、返せるから借りる。そこに切り替えるための最初の一歩が、今回の2つの数字です。

とはいえ、これを自分で集めて計算する時間が取れないのが社長の現実だと思います。もし「うちの数字はどうなっているのか、一度きちんと見ておきたい」と思われたら、御社の決算書をもとに、返済力と債務償還年数を一緒に確認するところからお手伝いできます。

よくある質問(FAQ)

Q. 建設業の借入は、いくらまでなら「返せる範囲」と言えますか?

A. 金額の絶対額ではなく、「1年間で返済にあてられるお金(経常利益+減価償却費)」が「その年に返す元金」を上回っているかで判断します。上回っていれば借入は減っていく方向、下回っていれば返すためにまた借りている状態です。まずはこの2つを並べて見ることをおすすめします。

Q. 債務償還年数とは何ですか?何年までが目安ですか?

A. 借入残高が、1年間で返済にあてられるお金(経常利益+減価償却費)の何年分にあたるかを示す数字です。銀行が融資判断で必ず見ており、一般に10年を超えると銀行の見方が変わってくると言われています。ただし業種や個社の事情で評価は変わるため、目安として捉え、詳しくは金融機関や専門家にご相談ください。

Q. なぜ営業利益や当期純利益ではなく「経常利益」で見るのですか?

A. 経常利益は利息(支払利息)を払ったあとに残る利益だからです。金利が上がると経常利益は減り、返済にあてられるお金もそのまま目減りします。だからこそ、金利上昇局面では経常利益をベースに返済力を見ることが実態に合っています。

Q. 返済力が足りていないと分かったら、まず何をすればよいですか?

A. 終わりの話ではありません。返済期間の延長、複数の借入の一本化、公庫など固定金利の先の確保といった打ち手があります。いずれも、動ける体力があるうちにこそ選べる選択肢です。数字が分かった時点が、手を打つスタート地点になります。

Q. 決算書を見ても、どの数字を使えばいいか分かりません。

A. 使うのは「1年間に返済した元金の合計」と「経常利益+減価償却費」の2つだけです。シードコンサルティングでは、御社の決算書からこの数字を一緒に拾い出し、返済力と債務償還年数を可視化するところからお手伝いしています。まずは現状を「はっきり数字にする」ことが第一歩です。

この記事の著者

岡田 聡(おかだ さとし)

株式会社シードコンサルティング 代表取締役

建設・リフォーム業界の中小企業に特化した財務・事業承継・M&Aコンサルティングの専門家。20年以上にわたり500社超の建設業経営者を支援。100件以上の事業承継案件を手がけた実績を持つ。YouTube「建設業支援TV〜お金のミカタ〜」で業界の経営ノウハウを発信中。日本経営士協会 経営士、相続事業承継コンサルティング協会 エグゼクティブコンサルタント。

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