新事業進出・ものづくり商業サービス補助金とは?3つの枠の選び方を解説

カテゴリ:建設業経営

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2026年度から、これまでの「新事業進出補助金」と「ものづくり補助金」が統合され、新制度「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」の第1回公募が始まりました。

補助上限は最大9,000万円です。制度は3つの枠に整理され、自社の投資が「新製品・新サービスの開発」「新市場への進出」「海外展開」のどれに当たるかによって、選ぶ枠が変わります。

まずは、自社が今回の投資によって何を実現したいのか、その狙いを言語化することが正しい制度選びの出発点です。

第1回公募は2026年6月29日に開始され、申請受付は8月31日から9月30日までです。本記事では、補助金の専門家との対談をもとに、建設業に特化して支援してきたシードコンサルティングの視点で、新制度の全体像と枠の選び方、押さえておきたい要件を整理します。

3つ
目的別に整理された
申請枠
最大9,000万円
補助上限の
最大額
9月30日
第1回公募の
申請締切
成長投資
制度活用の
中心テーマ

新事業進出・ものづくり商業サービス補助金とは
従来の新事業進出補助金とものづくり補助金を統合し、革新的な製品・サービス開発、新市場への進出、海外展開に向けた設備投資を支援する、中小企業向けの成長投資補助金です。

なぜ2つの補助金は統合されたのか

ものづくり補助金は、東日本大震災後から10年以上にわたって、中小企業の設備投資や新製品開発を支援してきました。

一方、新事業進出補助金は、コロナ禍に創設された事業再構築補助金の流れをくむ制度として、中小企業による新分野への進出や事業転換を支えてきました。

この二つの補助金が、2026年度に一本化されました。

統合の背景には、事務手続きの効率化という側面もありますが、より大きな狙いは国の政策転換にあると考えられます。

コストカット型の経済から、投資と賃上げを起点とする成長型経済へ
生産性向上のための設備投資と、新事業への挑戦を一体的に支援する制度へ再構成されたと受け止められます。

国は、生産性向上のための設備投資と、新事業への挑戦を、ともに「中小企業の成長支援」として意味の近いものと捉え、一体的な制度へ再構成したと考えられます。

シードコンサルティングでは、この制度を、単なる設備購入のための補助金ではなく、会社の成長に向けた「攻めの投資」を後押しする補助金と位置づけています。

なお、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金は、旧「ものづくり補助金」「新事業進出補助金」とは別制度として運用されています。過去の制度の考え方は引き継がれていますが、申請時には必ず新制度の公募要領をご確認ください。

新制度は目的別の「3つの枠」

新制度では、事業の目的に応じて3つの枠から一つを選んで申請します。

判断の軸は、次の3点です。

  • 新製品・新サービスの開発が中心か
  • 既存事業とは異なる新市場へ進出するのか
  • 海外市場への輸出に踏み出すのか
主な対象 補助上限
(最大)
補助率
(中小企業)
建物費
革新的新製品・
サービス枠
革新的な新製品・
新サービスの開発
3,500万円 1/2
小規模事業者は2/3
対象外
新事業進出枠 既存と異なる新市場・
高付加価値事業への進出
9,000万円 1/2
条件により2/3
対象
グローバル枠 海外市場開拓に向けた
国内体制の強化
9,000万円 2/3 対象

※補助上限は、従業員規模や賃上げ特例の適用によって変わります。表中の金額は、特例適用時などを含む最大額の目安です。補助下限額、事業実施期間、対象経費などの詳細は、最新の公募要領でご確認ください。

革新的新製品・サービス枠

革新的新製品・サービス枠は、旧ものづくり補助金に相当する枠です。

生産性向上のための設備投資が軸になりますが、同じような機械への単純な入れ替えは対象になりません。

新しい機能を備えた設備を導入し、それによって生産性向上や新製品・新サービスの開発につながることを示せるかが問われます。

建設業であれば、新工法に対応する設備の導入や、これまで提供していなかった新たな施工サービスの開発などが考えられます。

新事業進出枠

新事業進出枠は、旧新事業進出補助金に相当する枠です。

既存事業とは異なる「新しい市場・新しい顧客」への進出が対象となります。

建物費も経費対象となり、補助上限も大きいため、大型の設備投資や新拠点の整備を伴う事業に向いています。

新事業進出枠では、新規性・新市場性が厳しく審査されます
「本当に新しい市場なのか」「これまでとは異なる顧客層を対象としているのか」を明確に説明する必要があります。

これまで、ものづくり補助金を中心に申請してきた事業者にとっては、単なる設備導入ではなく、新しい市場や顧客への進出まで示す必要がある点に注意が必要です。

グローバル枠

グローバル枠は、海外市場の開拓や輸出に向けた国内体制の強化を支援する枠です。

補助率は2/3と、3つの枠の中で最も高く設定されています。海外旅費や通訳・翻訳費も対象経費に含まれます。

建設業では活用できるケースが限られるかもしれませんが、建材や工法、関連製品などの輸出に踏み出す企業にとっては、有力な選択肢になります。

同じ設備でも、投資の目的によって選ぶ枠は変わる

どの枠を選ぶかは、購入する設備の種類だけでは決まりません。

例えば、同じドローンを導入する場合でも、点検を新しい事業として立ち上げるのであれば、新事業進出枠が候補になります。

一方、これまでにない革新的な点検サービスを開発し、生産性向上につなげる計画であれば、革新的新製品・サービス枠が候補となる可能性があります。

枠選びの出発点は、設備ではなく投資の目的です
「何を買うか」ではなく、「その投資によって、どのような事業や市場をつくるのか」を先に整理しましょう。

見落とせない「賃上げ要件」

3つの枠に共通する基本要件のうち、とくに注意したいのが賃上げに関する要件です。

補助金の採択を受けた後に、定められた賃上げ目標を達成できなかった場合、補助金の返還を求められる可能性があります。そのため、申請時には、実現可能性のある賃上げ計画を慎重に立てる必要があります。

給与支給総額
年平均+3.5%以上
事業場内最低賃金
地域別最低賃金+30円以上
付加価値額
年平均+4.0%以上

給与支給総額については、事業計画期間中の年平均成長率を3.5%以上とすることが求められます。

また、事業場内最低賃金については、地域別最低賃金より30円以上高い水準を維持する必要があります。さらに、3年から5年の事業計画において、付加価値額を年平均4.0%以上成長させることも基本要件となります。

賃上げ要件は、採択されるためだけの条件ではありません
計画期間中に要件を達成できない場合、補助金の返還を求められる可能性があります。無理のない売上計画や利益計画とセットで検討することが重要です。

年平均3.5%という賃上げ水準は、一見すると高く感じられるかもしれません。

しかし建設業では近年、人材確保や定着を目的として、3.5%を上回る賃上げを実施する企業も増えています。平均的な水準の会社であれば、達成できる可能性は十分にあると考えられます。

そもそも、賃上げをしなければ人が集まらず、せっかく採用しても定着しにくい時代です。

生産性を高め、賃上げの原資を生み出す
そのための設備投資を補助金で後押しする、という順序で考えることが、この制度の本質です。

※具体的な賃上げ率や要件は、年度や公募回によって変更される場合があります。申請時には、必ず最新の公募要領をご確認ください。

申請前に知っておきたい実務のポイント

事業計画は「自社で作成」が原則

補助金の申請に必要な事業計画書は、申請者自身が作成することが原則です。

認定経営革新等支援機関などの専門家から、事業モデルの整理や計画書のブラッシュアップ、数値計画に関する助言を受けることは問題ありません。

しかし、申請者に代わって専門家が事業計画書そのものを作成する、いわゆる申請代行は認められていません。

事業計画書の作成代行は認められていません
他者による作成が発覚した場合、不採択や採択取消となる可能性があります。専門家の支援は、あくまで助言やブラッシュアップの範囲で受ける必要があります。

自社の経営課題や今後の方針を最もよく理解しているのは、経営者自身です。まずは自社で事業の狙いを整理し、そのうえで専門家から適切な助言を受ける進め方が重要です。

「補助金が取れるから」で事業を始めない

新事業進出・ものづくり商業サービス補助金は、大型の設備投資を伴う制度です。

そのため、「補助金が取れそうだから、とりあえず設備を買おう」「補助金があるから新事業を始めよう」という発想だけでは、採択は難しいと考えた方がよいでしょう。

重要なのは、来年度以降、会社をどのような方向へ成長させていくのかという経営方針です。

その事業計画の中に、今回の設備投資が自然に位置づけられているかどうかが問われます。

補助金は、事業の目的ではなく手段です
先に会社の成長戦略があり、その実現に必要な設備投資を補助金で後押しする、という順番を崩さないことが大切です。

自社の事業計画と補助金の公募スケジュールが合う会社にとって、この制度は成長投資を加速させる有力な選択肢になります。

交付までの期間は枠によって異なる

補助金は、採択された時点ですぐに設備を発注できるとは限りません。

採択後には、見積書や経費内容などについて確認を受け、正式な交付決定を得る必要があります。

とくに新事業進出系の枠では、建物費や大型設備など、対象経費の内容が細かく確認されるため、交付決定まで一定の期間を要することがあります。

発注時期、設備の納期、事業実施期間、支払いのタイミングなどを事前に確認し、余裕のあるスケジュールを組むことが必要です。

採択と交付決定は別の手続きです
原則として、交付決定前に設備を発注・契約した場合、その経費は補助対象になりません。資金繰りと納期を含めて、慎重に準備しましょう。

第1回公募のスケジュール

新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の第1回公募スケジュールは、次のとおりです。

公募開始
2026年6月29日
申請受付
2026年8月31日から9月30日18時まで
採択発表
2026年12月頃の見込み

申請受付の開始は8月31日ですが、事業計画の作成や見積書の取得、資金計画の整理には時間がかかります。

また、電子申請に必要なGビズIDプライムを取得していない場合は、事前の準備が必要です。

9月30日の締切から逆算し、できるだけ早い段階で準備を始めることをおすすめします。

第1回公募は、制度の方向性をつかむ重要なタイミングです
新制度の初回公募は、その後の申請動向を見極めるうえでも重要です。ただし、初回であっても採択が保証されるものではなく、事業計画の内容によって個別に審査されます。

※スケジュールは変更される場合があります。申請にあたっては、必ず最新の公募要領と公式案内をご確認ください。

いますぐ着手すべき3つのアクション

この補助金の活用を検討する場合、まずは次の3つから着手してください。

1

投資の狙いを「3択」で言語化する

自社の設備投資が、「新製品・新サービス開発」「新市場進出」「海外展開」のどれに当たるのかを整理します。ここが決まれば、選ぶ枠は自然に絞られます。

2

賃上げ要件を満たせるか試算する

給与支給総額の年平均3.5%以上、事業場内最低賃金が地域別最低賃金より30円以上高い水準などを、無理のない事業計画で達成できるか確認します。

3

事業計画とスケジュールを早めに固める

事業計画は自社作成が原則で、準備には時間がかかります。9月30日の締切から逆算し、必要に応じて専門家の助言を受けながら、早めに準備を進めましょう。

最初に考えるべきことは、「どの補助金が使えるか」ではありません
自社がこれから何を実現したいのかを明確にし、その実現手段として最適な枠を選ぶことが重要です。

建設業経営者の皆さまへ

新事業進出・ものづくり商業サービス補助金は、単なる設備購入のための制度ではありません。

これから会社をどのように成長させていくのか。その経営戦略を具体的な投資へ落とし込み、生産性向上や新市場への挑戦を後押しするための制度です。

だからこそ、「どの補助金が使えるか」から考えるのではなく、「会社の未来をどう描くか」から考えることが重要です。

補助金は、会社を成長させるための手段です。
自社に最適な投資計画を描き、その実現を支える制度として活用していきましょう。

補助金活用について相談しませんか?

「自社はどの枠が対象になるのだろう?」
「賃上げ要件を満たせる事業計画になるだろうか?」
「設備投資と資金繰りを一緒に考えたい」
そんな方はお気軽にご相談ください。

よくある質問

Q. 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金とは何ですか?

A. 2026年度に新事業進出補助金とものづくり補助金が統合されて始まった、中小企業向けの成長投資補助金です。革新的な新製品・サービス開発、新市場への進出、海外展開を支援します。

Q. 3つの枠はどのように選べばよいですか?

A. 「新製品・新サービス開発」「新市場進出」「海外展開」のどれを目的とする投資なのかによって選びます。

Q. 建設業でも賃上げ要件を満たせますか?

A. 人材確保のため賃上げを進めている会社であれば十分可能性があります。ただし、返還リスクもあるため無理のない事業計画を立てることが重要です。

Q. 事業計画書は専門家が作成できますか?

A. 作成代行は認められていません。専門家は助言やブラッシュアップという形で支援します。

Q. 第1回公募はいつまでですか?

A. 第1回公募の申請受付は2026年8月31日から9月30日18時までです。最新情報は公募要領をご確認ください。

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この記事の著者

岡田 聡

株式会社シードコンサルティング 代表取締役

建設業・リフォーム業に特化した財務・資金繰り・補助金・事業承継・M&A支援を行う経営コンサルタント。
20年以上にわたり500社を超える建設会社を支援し、経営改善・資金調達・事業承継を数多くサポートしています。

※本記事は一般的な情報提供を目的として作成しています。制度内容や公募要領は変更される場合があります。申請にあたっては、必ず最新の公募要領および公式情報をご確認ください。

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