建設業の事業承継は「業績がいい今」がベスト?創業100年・年商10億円企業のM&A事例を専門家が解説

カテゴリ:建設業経営

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建設業の事業承継は、業績が悪化してからではなく「業績がいい今」こそ動くべきです。建設業の後継者不在率は57.3%と全業種で最も高く、地方の優良企業ほど「後継者がいないまま時間だけが過ぎる」リスクを抱えています。

一方で、まだ4〜5年は先が見える安定した状態で準備を始めた会社は、企業価値を高めたうえで最善の相手に引き継げます。

本記事では、創業100年・年商10億円超の地方土木工事会社が「業績がいいうちに次の100年を考えたい」とM&Aを検討した実際の相談事例をもとに、シードコンサルティングが500社超の建設業支援で見てきた「成功する事業承継の動き方」を解説します。

57.3%
建設業の
後継者不在率
100年
事例企業の
創業歴
10億円超
事例企業の
年商規模
4つ
承継で外せない
重要論点

建設業の「攻めの事業承継」とは
業績が安定している段階で計画的に企業価値を磨き上げ、親族・社内・第三者承継、つまりM&Aの中から最善の引き継ぎ先を選び抜く、余裕を持った承継の進め方です。売却して終わりではなく、会社・社員・取引先を「次の100年」へつなぐことを目的とした準備です。

なぜ建設業は「業績がいい今」こそ事業承継を考えるべきなのか

事業承継の相談で最も多い失敗は、「もう限界」というギリギリの段階で動き始めることです。建設業の場合、その背景には業界特有の構造リスクがあります。

後継者不在率57.3%、建設業は全業種ワースト

帝国データバンクの2025年調査によると、建設業の後継者不在率は57.3%で、全業種の中で最も高い水準です。ピークだった2018年の71.4%からは改善傾向にあるものの、依然として「次を誰に渡すか決まっていない」会社が半数を超えています。

親族に後継者がいないことは、もはや特別なケースではありません。だからこそ、親族内承継だけでなく、社内承継やM&Aも含めた複数の選択肢を早めに検討する必要があります。

地方の建設会社が抱える構造的リスク

地方の建設会社、特に公共工事を担う土木工事業では、目の前の受注が忙しくても、10年後・20年後の事業環境は見通しにくくなっています。人口減少が進む地域では公共投資の先行きが読みづらく、従業員の高齢化も同時に進みます。

「今は忙しいから大丈夫」という感覚と、「次の世代に渡せる会社であり続けられるか」という問いは、まったく別の話です。

ギリギリで動く会社と、余裕を持って動く会社の差

うまくいかない会社は、業績が落ち込んでから「もうどうしようもない」と動き始めます。この段階では企業価値、つまり売却時の評価が下がっており、良い引き継ぎ先も見つけにくく、最終的に廃業を選ばざるを得ないケースもあります。

業績がいい今こそ、選択肢が一番多い
まだ業績が安定し、4〜5年先が見えている段階で動ける会社は、時間をかけて準備し、企業価値を高め、相手をじっくり選べます。

創業100年・年商10億円企業のM&A相談事例

ここからは、実際にシードコンサルティングが受けたご相談をもとに、建設業のオーナー家が直面する論点を具体的に見ていきます。なお、特定を避けるため、内容は一部変更しています。

ご相談者は、地方で長年続く土木工事業。年商は10億円超、創業をたどると約100年の歴史を持つ会社です。株主は親族の中でおおむね集約されており、地元では有力な施工会社として知られる存在でした。

来社されたのは、40代後半の3代目社長と、70代の会長、先代のお二人です。

3代目社長の「次の100年」への使命感

社長は3代目として会社を継いだものの、ご自身にお子さんがいない状況でした。後継者が親族にいない。その事実を前に、社長が口にしたのは「高く売って第二の人生を」という話ではありませんでした。

社長の言葉
「祖父から父が築いてきたこの会社を、次の100年、200年残していくことが一番大切。自分の代で終わらせてはいけない。だからこそ、業績がいい今のうちに最善の方法を考えたい」

この使命感こそが、相談の出発点でした。40代でここまで先を見据えて決断できることに、私たちも強い感銘を受けました。

地元に知られたくないという不安

もう一つ印象的だったのが、情報管理への強い意識です。地方では情報があっという間に広がります。地元の銀行や税理士、取引先にM&Aの検討が知られれば、思わぬ憶測を招きかねません。

だからこそ、地元ではなく東京まで足を運んで相談されたのです。建設業特化で発信を続けてきたことが、こうした信頼につながったのだと感じています。

なぜ「すぐ売る」ではなく「磨き上げ」を提案したのか

一般的なM&A仲介では、相談を受けると「早く売却しましょう」という方向に進みがちです。営業上、どうしても成約を急ぐ力学が働くからです。

私たちのスタンスは逆です。多くの場合、「すぐに売らないでください。まず準備、つまり磨き上げをしませんか」とお伝えします。

磨き上げとは
企業価値が高まり、かつオーナーにとって最も有利なタイミングで承継できるよう、手前から会社とオーナー資産を整えていく取り組みです。

半年〜1年かけて整えるだけでも、結果は大きく変わります。すべての会社に当てはまるわけではありませんが、磨き上げによって当初の評価より企業価値が高まるケースは多く、1.5倍・2倍になった例もあります。

業績がいい会社の事業承継で外せない4つの論点

この事例の相談を通じて整理された論点は、業績の良い建設会社の承継に共通するものです。具体的な税務・法務は必ず専門家にご確認ください。

論点1:自社株という「時限爆弾」

業績が良い会社は、当然ながら株価、自社株評価額が上がり続けます。親族内で承継する場合、株価が高いほど贈与税・相続税の負担が重くなり、引き継ぎづらくなります。

論点2:分散した株式の集約

長い歴史を持つ会社は、株式が親族間に分散しているケースが少なくありません。株主の同意が得られないと、いざ承継を決めようとしても前に進めないことがあります。

論点3:資産管理会社によるオーナー資産の切り分け

会社の事業と、オーナーが残したい個人資産を切り分けて整理しておくことで、事業をしっかり引き継げる状態をつくります。これも時間に余裕があれば計画的に進められます。

論点4:相続も見据えた兄弟間の配慮

会社の承継・売却は、先代の資産であり、相続にも直結します。後で揉めることのないよう、会社の引き継ぎと相続を一体で捉え、資産の分割まで配慮しておく必要があります。

事業承継で成功する会社・失敗する会社の違い

成功と失敗を分けるのは、技術論よりも「いつ動き始めたか」です。

ギリギリで動く会社は選択肢が狭く、価値も下がります。逆に、まだ先が見えている安定期に動く会社は、企業価値を高め、相手を選び、家族も社員も納得する形を設計できます。

M&Aは「会社を手放すこと」ではない
優秀な会社に引き継いでもらえるなら、それが一番。築いてきたものが、社員もお客様も含めて、次の良い会社で発展・成長していく姿を残せる方がいい。M&Aは、思いと事業を次へ渡す手段にもなります。

今すぐ着手すべき3つのアクション

① 会社の現在地を把握する

自社株評価額、株式の保有状況、2ヶ月先の資金残高を確認する。即答できない項目があれば、まずそこから整えます。

② 磨き上げに必要な期間から逆算する

半年〜1年、場合によっては数年。理想のタイミングから逆算して、今やるべきことを決めます。

③ 守秘性の高い相談先に、早めに相談する

地元に知られたくない場合ほど、建設業に理解のある外部の専門家に早く相談しておくことが安心につながります。

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シードコンサルティングでは、建設業特化の承継診断「事業承継ドック」で、自社株評価・株式の保有状況・承継の選択肢を整理し、最善のロードマップを一緒に描きます。M&Aを視野に入れた磨き上げや第三者承継のサポートも、建設業を理解したチームで守秘性を徹底しながら対応します。

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よくある質問(FAQ)

Q. 建設業の事業承継は、業績が良い時と悪い時のどちらで始めるべきですか?

A. 業績が安定している良い時に始めることを強くお勧めします。業績が落ちてから動くと企業価値が下がり、良い引き継ぎ先も見つけにくくなります。

Q. 磨き上げをすると、本当に企業価値は上がるのですか?

A. すべての会社に当てはまるわけではありませんが、磨き上げによって当初の評価より企業価値が高まるケースは多くあります。財務の整理、株式の集約、オーナー資産の切り分けなどを計画的に進めることがポイントです。

Q. 後継者が親族にいない建設会社でも、会社を残す方法はありますか?

A. あります。建設業のM&Aは年々増加しており、特に施工力と人材を持つ会社は買い手からの評価が高い傾向にあります。第三者承継は、会社・社員・取引先を次の良い会社へ引き継ぐ現実的な選択肢です。

Q. 地元に知られずに事業承継・M&Aを進めることはできますか?

A. 守秘性を保ちながら進めることは可能です。地方の有力企業ほど情報の広がりに敏感です。建設業に理解があり、情報管理を徹底できる外部の専門家に相談することで、周囲に知られる前段階から準備を進められます。

Q. 年商10億円規模の建設会社でも、事業承継の専門家は必要ですか?

A. むしろこの規模の会社にこそ重要です。業績が良いほど自社株評価額が高くなり、税負担や株式の集約、相続との調整など論点が複雑になります。計画的な準備の有無で、最終的な結果は大きく変わります。

この記事の著者

岡田 聡(おかだ さとし)
株式会社シードコンサルティング 代表取締役
建設・リフォーム業界の中小企業に特化した財務・事業承継・M&Aコンサルティングの専門家。20年以上にわたり500社超の建設業経営者を支援。100件以上の事業承継案件を手がけた実績を持つ。YouTube「建設業支援TV〜お金のミカタ〜」で業界の経営ノウハウを発信中。日本経営士協会 経営士、相続事業承継コンサルティング協会 エグゼクティブコンサルタント。
https://seed-consulting.jp/

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