自社株の相続税評価ルールが60年ぶりに改正へ。建設業オーナー経営者が今すぐ動くべき理由
カテゴリ:建設業経営
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国税庁が非上場株式、いわゆる自社株の相続税評価方法を60年ぶりに本格見直すと発表しました。同時に、贈与税・相続税を実質ゼロで自社株を後継者に渡せる「事業承継税制の特例」の申請期限は2027年9月末が最終期限です。
評価ルールが変わる前のこのタイミングに動けるかどうかが、建設業オーナーの事業承継コストを大きく左右します。本記事では、建設業オーナー経営者が今すぐ確認すべき自社株評価と、事業承継税制の特例について解説します。
ルール改正
最終期限
適用期限
アクション
自社株の相続税評価改正とは
国税庁が非上場中小企業の株式評価額の算定ルールを抜本的に見直す制度改正のことです。現行の評価方法では同じ会社の株価でも算定方法によって数倍の差が生じており、この是正が今回の改正の目的です。
何が変わるのか:60年ぶりの自社株評価ルール改正
非上場株式とは何か
中小企業のオーナー経営者は、自分の会社の株式、自社株を保有しています。上場企業の株と違い、市場での売買がないため「今いくらか」が分かりにくい資産です。しかし、相続や贈与が発生した際には評価額が算定され、その額に応じた税金が課されます。
気づいたら自社株の評価額が2億円、5億円になっていた、という話は決して珍しくありません。その分だけ相続税の負担も重くなるため、後継者への引き継ぎが難しくなる大きな要因になっています。
現行の評価方法に何が問題だったのか
現在、非上場株式の評価方法には主に2つあります。「類似業種比準方式」と「純資産価額方式」です。
問題は、同じ会社の株式でもどちらの方式で評価するかによって、評価額が大きく変わることです。試算によっては、片方の評価が4倍以上になるケースもあります。
この差を活用した税務対策が合法的に行われており、本来の価値の3分の1以下にまで評価額を圧縮できるケースも存在しました。国税庁はこうした過度な圧縮を問題視し、今回の抜本改正に至りました。
改正後はどうなるか
詳細なルールはまだ検討中ですが、方向性として「評価額が上がる」と見ておくのが自然です。現行ルールの抜け穴を塞ぐ方向での見直しになるため、これまで可能だった評価圧縮の対策が使いにくくなる可能性があります。
タイムリミットが迫っている:事業承継税制の特例
事業承継税制の特例とは
自社株の承継問題に対応するため、国はこれまで「非上場株式等についての贈与税・相続税の納税猶予の特例」、いわゆる事業承継税制の特例措置を設けてきました。
この特例を活用すると、後継者への自社株の贈与・相続にかかる贈与税・相続税が実質ゼロになります。長年の課題だった「会社を引き継ぐ際の税負担」を大幅に軽減できる制度です。
期限は2027年が最後
この特例の申請期限は2027年9月末です。そして、実際に贈与・相続を完了させる適用期限は2027年12月末です。これまで期限が延長され続けてきたこの特例ですが、今回は「延長しない」と明言されています。
60年ぶりの評価ルール改正と重なるこのタイミングは、制度上の「最後のチャンス」と受け止めるべき局面です。手続きには一定の時間と専門家との連携が必要なため、「まだ先」と考えているなら今すぐ動き始める必要があります。
建設業オーナーが特に注意すべき3つのポイント
建設業の経営者は、他業種と比べて自社株の評価が高くなりやすい構造を持っています。
① 土地・重機・車両など純資産が膨らみやすい
建設業は事業用地・重機・車両などの固定資産を多く保有します。これらは純資産価額方式での評価額を押し上げる要因になります。知らない間に自社株評価が膨らんでいるケースが特に多い業種です。
② 利益の波が大きく、評価額も変動しやすい
受注量や工事の規模によって年度ごとの利益に波があります。好調な年が続いた後に相続が発生すると、高評価のタイミングで多額の相続税が発生するリスクがあります。
③ 社長個人の信用・人脈が会社の収益力に直結している
建設業の中小企業では、社長の個人的な信頼関係が受注の基盤になっているケースが多い。これは事業承継における「引き継ぎにくさ」と表裏一体であり、自社株評価においても影響します。
今すぐやるべき3つのアクション
アクション1:自社株の現在の評価額を知る
「うちの自社株、今いくら?」に即答できない経営者は少なくありません。まず現在の評価額を把握することが、すべての出発点です。評価額を知ることで、相続が発生した場合の税額の試算もできます。
アクション2:後継者と自社株について話し合う
相続が発生してから「こんなに税金がかかるとは思わなかった」と揉めるケースは少なくありません。後継者と、今のうちに自社株の承継方針について話し合っておくことが重要です。特例税制を使うかどうかも、後継者の意向が前提になります。
アクション3:事業承継税制の特例が使えるか検討する
自社株の評価額が一定以上ある場合、今回の特例措置の活用が大きな節税につながる可能性があります。ただし、制度の要件は複雑であり、使い勝手が難しい部分もあります。専門家と一緒に「使えるか・使うべきか」を検討するのが現実的です。
2027年9月末から逆算してください
申請期限から逆算すると、動き出せる猶予はわずかです。自社株評価、後継者との合意、専門家との検討、申請準備まで考えると、「まだ先」ではありません。今が入口です。税金は寝て待っても減りません。残念ながら、ここは現実がシビアです。
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よくある質問(FAQ)
Q. 自社株の評価額はどうやって調べればよいですか?
A. 自社株の評価は、決算書をもとに税理士や事業承継の専門家が算定します。会社の純資産・利益・業種などをもとに複数の評価方法で試算するため、専門家への相談が必要です。
Q. 事業承継税制の特例は、どんな会社でも使えますか?
A. 一定の要件があり、すべての会社が活用できるわけではありません。ただし、要件を満たせば贈与税・相続税が実質ゼロになる非常に優遇された制度です。まず「使えるかどうか」を専門家と確認することをお勧めします。
Q. 2027年の期限を過ぎるとどうなりますか?
A. 特例措置の申請ができなくなるため、通常の贈与税・相続税のルールが適用されます。さらに今回の評価ルール改正後は自社株の評価額が上がる方向が見込まれるため、承継コストが増大する可能性があります。
Q. 後継者がまだ決まっていない場合はどうすればよいですか?
A. 後継者が未定でも、自社株の評価額を把握し、承継の選択肢を整理しておくことは有益です。後継者が決まってから動き始めると時間が足りなくなります。
Q. 建設業は自社株評価が高くなりやすいと聞きましたが、何か対策はありますか?
A. 土地・重機・車両など固定資産の保有構造を整理すること、利益の平準化、株価圧縮策の検討など、評価額に影響する要素への対策は複数あります。ただし今回の改正後は対策できる余地が狭まる可能性があるため、改正前のこのタイミングでの診断・対策着手が重要です。
ご注意
本記事は情報提供を目的としており、個別の税務・法律アドバイスではありません。具体的な判断は、税理士・弁護士などの専門家にご相談ください。
この記事の著者
岡田 聡(おかだ さとし)
株式会社シードコンサルティング 代表取締役
建設・リフォーム業界の中小企業に特化した財務・事業承継・M&Aコンサルティングの専門家。20年以上にわたり500社超の建設業経営者を支援。100件以上の事業承継案件を手がけた実績を持つ。YouTube「建設業支援TV〜お金のミカタ〜」で業界の経営ノウハウを発信中。日本経営士協会 経営士、相続事業承継コンサルティング協会 エグゼクティブコンサルタント。
https://seed-consulting.jp/
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