建設下請け会社はなぜ「継がせたくても継がせられない」のか?年商8億円の事業承継・財務改善事例を解説

カテゴリ:建設業経営

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売上は出ているのに資金繰りは綱渡り。息子も社内にいるのに、この財務状態では継がせられない。

年商8億円・債務超過2億円の基礎工事会社が直面した、決して珍しくない現実です。

結論から言えば、出口を塞いでいたのは事業そのものではなく、複雑化・属人化した財務でした。そして最初の一手は、新規受注でも借入でもなく、財務の精密検査です。

8億円
事例企業の
年商規模
2億円
債務超過の
規模
30台
保有していた
重機数
1.4億円
年間の
重機リース料

下請け工事会社の事業承継とは
単なる経営者交代ではなく、複雑化・属人化した財務を「後継者が引き継げる状態」へ整え直す財務再構築のプロセスそのものです。お金は回っていても、柱が傷んだ家は引き継げません。引き渡す前に、まず構造を点検する必要があります。

なぜ売上があるのに資金繰りが厳しいのか?

まずは今回のモデルケースの全体像です。杭打ちや地盤改良を手がける基礎工事会社で、大型の特殊重機を多数保有し、複数のグループ会社を抱えて年商はおよそ8億円。30〜40年続く立派な事業者です。

一方で財務を見ると、直近期は赤字、長年積み重なった債務超過が約2億円。手元資金も薄く、新規の資金調達も難しい。「いつ資金ショートしてもおかしくない」状態でした。

重機30台が生む「重コスト構造」

基礎工事会社にありがちなのが、重機関連コストの重さです。この会社も重機を約30台保有し、その多くをリースで賄っていました。

重機の賃借料、つまりリース料は年1.4億円規模。これに加えて、古い機械ほど修繕費がかさみ、1回の修理で数百万円が飛ぶことも珍しくありません。

重機が利益を圧迫する構造
賃借料・減価償却・修繕費という重機関連コストが、利益をじわじわと圧迫していました。重機がなければ工事はできず、いずれ数億円規模で新しい大型機械を買い替える必要も出てきます。

社員は辞められても、社長は辞められない。そんな構造の中で走り続けている状態でした。

粗利は出ているのに、営業赤字

数字を見ると、主要会社は売上6億円・粗利1.3億円で、粗利率は21%。決して悪くありません。

ところが販管費が1.4億円かかり、営業利益はマイナス1,000万円。つまり、粗利は確保できているのに、コスト構造が利益を食い尽くしてしまっていました。

売上ではなく、利益と資金繰りを見る
「売上は上がっているのにお金が残らない」という社長の実感は、ここに原因がありました。売上規模だけでは、会社の健康状態は分かりません。

継がせたくても継がせられない3つの理由

息子さんが社内にいても、社長が承継に踏み切れない。その背景には、多くの中小建設業に共通する3つの理由があります。

理由1:資金繰りの限界

資金繰りが綱渡りの会社は、社長というエンジンが止まった瞬間に一気に回らなくなります。長年の感覚と人脈で資金を回してきた社長が抜ければ、会社が持たない。だから継がせられない、という構造です。

理由2:債務超過2億円で出口が塞がっている

債務超過が2億円ある会社をそのまま息子に継がせれば、最悪の場合、後継者を自己破産に追い込みかねません。親として、それはできない。では第三者承継、つまりM&Aはどうかというと、借金ごと2億円の債務超過を引き受けてくれる買い手は、現実にはまず現れません。

理由3:時間の猶予がない

社長の年齢に加え、資金繰りの観点でも余裕がありません。金融機関もリース会社も、「70代後半で後継者が決まっていない会社に貸し続けて大丈夫か」と身構えます。早く次の道筋を示さなければ、取引先も金融機関も付いてきてくれません。

出口を塞ぐ本当の原因は「複雑化・属人化した財務」

決算書や資料を精査して見えてきたのは、長年の経営の中で財務が複雑に絡み合い、改善に着手できないまま固まってしまった構造でした。

社長の感覚経営と、グループ間の不透明なお金の流れ

何十年も経営していれば、儲かった時期も当然あります。その中で会社のお金を使ったり、個人のお金を入れたりが繰り返され、それが決算書に表れない部分も含めて積み上がっていました。

グループ会社が複数あることで資金の流れが見えにくく、帳簿上のズレも生じます。経費と個人的な支出の線引きも曖昧で、役員報酬や交際費がなんとなく積み重なり、社長本人ですら全体像を把握しきれていない状態でした。

感覚的な資金管理は、後継者には引き継げない
社長の経験と勘でなんとか回してきた会社は、社長がいるうちは持ちます。しかし、そのままでは後継者に引き継げません。

「見られたくない」という心の壁

ここが事業承継で本当の山場になります。社長には、見られたくない財務の実態があるものです。

「一度ちゃんと精査して整理しませんか」と提案すると、頭では必要性を理解していても、防衛本能が働いて言葉を濁す。これは人間として自然な反応です。

人間ドックと同じで、「悪いところが見つかったらどうしよう」という不安があります。しかし、その壁を越えなければ、自分一人ではどうにもならない状態から抜け出すことはできません。

これは「悪い会社」の話ではありません
長年ここまで事業を続けてきたこと自体が素晴らしいことです。だからこそ、次の世代へ引き継ぐために財務を整理するタイミングが来た、ということです。

解決の第一歩は「財務の精密検査」

私たちが最初に取り組むのは、財務の精密検査です。

人間ドックを思い浮かべてください。通常の健康診断では分からない不調も、詳しく検査すれば原因が分かり、適切な治療方法が見えてきます。

会社も同じです。財務の実態を可視化しない限り、本当に必要な改善策は見えてきません。

家に例えると「リフォーム前の点検」
水道は通っていても柱が傷み、シロアリに食われた家は、そのままでは子どもに譲れません。まずは構造を点検し、傷んだ部分を直してから引き渡す。その順番が大切です。

具体的には、資金繰りの実態を把握し、お金の流れを見える化し、重機などの資産が利益を生んでいるかを点検し、社長がいなくても回る管理体制を整えていきます。

幸い、この会社にはまだ時間が残されていました。だからこそ、今なら間に合う。そのタイミングでご相談いただけたことが何より大きかったのです。

下請け工事会社に共通する構造的な課題

この会社だけが特別なのではありません。下請け工事会社には共通する構造があります。

元請け依存が利益を圧迫する

一社の元請けに依存していると、「仕事を止められたら困る」という思いから価格交渉ができません。

安い単価でも受け続け、利益率が改善しない。その状態が何十年も続けば、財務は徐々に疲弊していきます。

改善の第一歩は「見える化」
財務の実態を把握し、コスト構造を見直せば、利益を改善する打ち手は見えてきます。問題は「改善できないこと」ではなく、「現状が見えていないこと」です。

建設業経営者に伝えたいこと

「継がせたいけれど継がせられない」という悩みは、決して珍しいものではありません。

多くの場合、問題は後継者ではなく、財務の構造にあります。そして、その構造は整理すれば改善できます。

重要なのは、「もっと早く相談すれば良かった」と後悔する前に、一度会社の健康診断を受けてみることです。

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よくある質問(FAQ)

Q. 売上があるのに資金繰りが苦しいのはなぜですか?

A. 重機リース料や修繕費など固定コストが高く、粗利が出ていても販管費が利益を上回るケースが多いためです。

Q. 債務超過でも事業承継できますか?

A. そのままでは難しい場合が多いですが、財務改善と出口設計を進めることで可能性は広がります。

Q. 財務の精密検査とは何をするのですか?

A. 資金繰り・お金の流れ・資産の収益性・管理体制などを総合的に分析し、改善ロードマップを作成します。

この記事の著者

岡田 聡(おかだ さとし)
株式会社シードコンサルティング 代表取締役
建設業専門の財務・事業承継・M&Aコンサルタント。20年以上にわたり500社超の建設業経営者を支援。財務改善から事業承継・出口設計まで伴走している。

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