年商8億円なのに息子に継がせられない──建設業の事業承継で「出口が見えない」社長が最初にやるべきこと

年商8億円、重機30台超を保有する基礎工事会社の70代社長が「息子に会社を継がせたいが、この状態では渡せない」と相談に来られました。売上は堅調でも営業利益はマイナス、債務超過は約2億円。やめたくてもやめられない、渡したくても渡せない――この「出口なき状態」は、実は多くの建設業経営者に共通する課題です。

本記事では、シードコンサルティングが、建設業の事業承継で「出口が見えない」状態に陥る原因と、そこから抜け出すための考え方・進め方を、500社超の支援実績をもとに解説します。

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建設業の「出口なき事業承継」とは?
経営者が引退を望みながらも、債務超過・財務の不透明さ・後継者への負担といった複合的な要因により、承継もM&Aも廃業も選べない状態を指します。シードコンサルティングでは、500社超の建設業支援を通じて、この構造的な問題を「財務の可視化」を起点に解決してきました。
8億円
相談者の年商規模
▲1,000万円
実際の営業利益
約2億円
債務超過額
500社超
シードの支援実績

なぜ年商8億円の会社が「継がせられない」のか

数字だけ見れば悪くない──しかし実態は赤字

今回ご相談をくださったのは、基礎工事を手がける年商8億円規模の会社の70代社長です。杭打ちや地盤改良用の大型重機を30台以上保有し、長年にわたり元請けの下で堅実に仕事を続けてこられた方でした。

息子さんも社内にいる。事業承継の意思もある。にもかかわらず、「この状態では、さすがに渡せない」とおっしゃいました。売上規模はあるものの、販管費の負担が重く、営業利益はマイナス。数字の表面と実態にズレがある状態です。

重機30台が経営を圧迫する構造

重機30台のリース返済・修繕費が毎年重くのしかかります。古い重機が壊れれば数百万円の修理費が発生し、かといって新しい重機を入れなければ仕事が取れない。設備投資が利益を食い続ける構造に陥っていました。

債務超過2億円──承継もM&Aも選べない

さらに深刻なのが、約2億円の債務超過です。この状態で息子に会社を渡せば、万一のとき自己破産させてしまうリスクがあります。M&Aを考えても、2億円の借金ごと引き受けてくれる相手はそう簡単には見つかりません。

やめたくてもやめられない。渡したくても渡せない。この「出口のない状態」が、建設業の事業承継を難しくしている本質です。

もうひとつの壁──「財務の中身を見られたくない」

この事例で本当に大きかったのは、財務の「見えない壁」です。長年の経営の中で、会社と個人のお金の境界が曖昧になっていたり、グループ間の資金移動が複雑に絡み合っていたりするケースは珍しくありません。決算書には載っていない「実態」が存在するのです。

人間ドックと同じです。
「何か見つかったら怖い」――でも、だからこそ受ける意味があります。見えないまま放っておけば、手遅れになるかもしれません。

「出口なき状態」から抜け出す3つのステップ

500社以上の事業承継に関わってきた経験から断言します。こうした状況は珍しいものではなく、抜け出す方法もあります。重要なのは、順番を間違えないことです。

ステップ1:財務の実態を可視化する
まずやるべきは、決算書の裏にある「本当の数字」を明らかにすることです。案件別の粗利、重機ごとの収支、グループ間取引の整理などを進めるだけで、次にやるべきことが驚くほどクリアになります。
ステップ2:「磨き上げ」で会社の価値を上げる
財務の実態が見えたら、次は承継やM&Aに向けた「磨き上げ」です。不採算の重機を整理する、取引条件を見直す、個人と法人の資金を明確に分離する。こうした地道な改善を2〜3年かけて進めることで、会社の価値は大きく変わります。
ステップ3:出口の選択肢を複数持つ
親族内承継だけが出口ではありません。社内幹部への承継、M&Aによる第三者承継、段階的な縮小も含めて、複数の選択肢を並行して検討することが重要です。どの道を選ぶとしても、財務の可視化と磨き上げは共通の前提条件です。
「自分だけじゃない」と知ることが、一歩目になります。
社長は孤独です。特に財務の問題は、家族にも社員にも相談しにくい。しかし、同じような状況にある建設業の社長は決して少なくありません。まずは実態を可視化することで、「出口が見えない」状態から「選択肢が見える」状態へ進めます。

いますぐ着手すべきアクション

  1. 財務の「精密検査」を受ける
    決算書だけでなく、案件別粗利・設備別収支・資金繰り予測の3点を確認しましょう。2ヶ月先の資金残高がいくらになるか即答できない場合は、可視化が不足しています。
  2. 出口の選択肢を整理する
    親族承継・社内承継・M&A・段階的縮小など、それぞれにどんな条件と準備期間が必要かを把握することが第一歩です。
  3. 専門家に「安心して見せられる場」を作る
    「見られたくない」という気持ちは自然です。しかし守秘義務を持つ外部専門家なら、本音で話せる環境を作れます。最初の一歩は、相談することです。

よくある質問(FAQ)

Q. 年商8億円規模の建設会社で、債務超過でも事業承継は可能ですか?

A. 可能です。ただし、債務超過の原因を特定し、不採算事業や遊休資産の整理、取引条件の見直しなどを計画的に進める必要があります。2〜5年単位の準備が必要になることも多いため、早めの着手が重要です。

Q. 建設業のM&Aで、重機や設備は評価されますか?

A. はい。特に基礎工事や地盤改良用の大型重機を保有する会社は、即戦力の施工能力として評価されることがあります。ただし、年式・稼働率・メンテナンス状態によって評価額は大きく変わります。

Q. 決算書にのっていない「実態」とは何を指しますか?

A. 代表的なものとして、社長個人と会社の貸借関係、グループ会社間の資金移動、簿外の保証債務、実態と乖離した減価償却などがあります。事前の精密検査で見える化しておくことが不可欠です。

Q. 事業承継の相談は、どのタイミングで始めるべきですか?

A. 理想は5〜10年前です。特に債務超過や財務整理が必要な場合は、早く始めるほど選択肢が広がります。「まだ先」と思っているうちに手遅れになるのが事業承継の怖さです。

この記事の著者

岡田 聡(おかだ さとし)
株式会社シードコンサルティング 代表取締役
建設・リフォーム業界の中小企業に特化した財務・事業承継・M&Aコンサルティングの専門家。20年以上にわたり500社超の建設業経営者を支援。100件以上の事業承継案件を手がけた実績を持つ。YouTube「建設業支援TV〜お金のミカタ〜」で業界の経営ノウハウを発信中。日本経営士協会 経営士、相続事業承継コンサルティング協会 エグゼクティブコンサルタント。
https://seed-consulting.jp/

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