信用金庫の赤字が急増、建設業の資金繰りはどうなる?金利上昇が中小建設業に与える影響を専門家が解説
信用金庫の赤字急増は、建設業の資金繰りにどう影響するのか——結論から言えば、信用金庫をメインバンクとする中小建設業ほど、今後は新規融資・増枠・条件変更の審査が厳しくなる可能性が高まっています。
全国254の信用金庫の直近決算で、最終赤字となった信金は前の期の5から17へと3倍以上に急増し、含み損は全信金合計で約2兆6000億円に膨らみました(日経新聞2026年8月27日付)。
「最後の砦」だった信金が揺らぐいま、社長が今から準備できることを整理します。
信用金庫の赤字急増とは
金利上昇によって信金が長年保有してきた国債などの有価証券の価値が下がり(含み損が拡大し)、かつ貸出先の乏しい地域で運用に頼らざるを得なかった収益構造が、金利上昇局面で裏目に出て収益を圧迫している現象です。
信用金庫17社が赤字転落——いま何が起きているのか
日経新聞(2026年8月27日付)は一面で「17信金、金利上昇で赤字」と報じました。全国254の信用金庫の前期決算がまとまり、最終赤字となった信金が17にまで急増したという内容です。現場で資金調達を支援している立場から見ても、これは看過できない数字です。
最終赤字の信金が5→17に急増、含み損は約2兆6000億円
最終赤字の信金は、前の期のわずか5から17へと、3倍以上に増えました。原因は金利上昇です。
信用金庫が長年保有してきた国債などの有価証券は、金利が上がると価値が下がります。これが「含み損」です。
全信金の含み損の合計は前の期比7%増の約2兆6000億円まで膨らみました(日経新聞2026年8月27日付)。
含み損の9割を上位5信金が占める/但馬信金は13年ぶりの赤字
注目すべきは、その含み損の約9割を、上位わずか5つの信金が占めているという点です。特定の信金に負担が偏っている構造がうかがえます。
個別では、兵庫県の但馬信用金庫が195億円の最終赤字となり、これは13年ぶりの赤字だと報じられています(日経新聞2026年8月27日付)。数字だけを見ると一部の話に思えますが、後述するとおり、これは取引先の中小企業にも波及しうる問題です。
なぜ地方銀行は過去最高益で、信用金庫は赤字なのか
ここで一つ問いかけたいのは、「では地方銀行やメガバンクも同じように苦しいのか」ということです。
答えは、真逆です。同じ「金利上昇」という出来事が、信金と銀行でまったく逆の結果を生んでいます。この差の理由を理解しておくと、自社のメインバンクが今どういう立場にあるのかが見えてきます。
同じ「金利上昇」でも結果は真逆——地銀は2期連続の過去最高益
上場している地方銀行73社のうち、9割にあたる66社が増益となりました。全体の純利益は前の期比37%増の1兆7118億円で、2期連続の過去最高益です(日経新聞2026年8月27日付)。
片方は過去最高益、片方は赤字転落。同じ金利上昇局面で、これほど結果が分かれています。
「貸したくても貸す先がない」——信用金庫の構造問題
理由はシンプルです。貸出先が豊富な銀行は、金利が上がれば貸出金利も引き上げられるので、収益が伸びます。
一方、信用金庫はそもそも営業エリアが限定されており、人口減少が進む地方ほど、貸す先そのものが乏しいのが実情です。「貸したくても、貸す先がない」。だから、余った預金を国債などの有価証券で運用するしかなかった。それが今回の金利上昇で裏目に出た——これが構造です。
つまり今回の赤字は一時的な不運ではなく、地域金融が長年抱えてきた課題が金利上昇で表面化したものと考えられます。
建設業の資金繰りに何が起きるのか——「最後の砦」が揺らぐ
正直に言えば、これは今に始まったことではありません。日々の資金調達支援の現場でも、ここ最近、融資の「取りづらさ」を明らかに感じています。
信金の担当者と話していても以前とは温度感が違い、審査のスピードや姿勢が少しずつ変わってきているように見えます。「今ちょっと、胸を張って銀行に行ける状態じゃないんだよね」——そう本音を漏らす社長も増えてきました。
信金がメインバンクの会社に起きうる3つの変化
このまま何も手を打たなければ、次のような変化が段階的に進む可能性があります。
① 新規融資・増枠の審査が厳しくなる
信用金庫がメインバンクの会社では、新規融資や増枠の審査が厳しくなっていく可能性があります。
② 既存借入の条件変更が難しくなる
既存借入の条件変更(リスケジュール等)の協議でも、これまでどおりにはいかなくなる可能性があります。
③ 廃業・倒産リスクが高まる
資金繰りが厳しい会社から順に、廃業や倒産のリスクが高まっていく可能性があります。
これは煽っているのではなく、いま起きていることを客観的に積み上げると見えてくる流れです。
コロナ時のような国の大規模支援は、もう出てこない
もう一つ、厳しい現実があります。コロナ禍のときのような、実質無利子・無担保のいわゆる「ゼロゼロ融資」といった大規模な国の支援策は、もう出てくる見込みは高くありません。
「借りにくい」という状況を国が肩代わりしてくれる時代ではなくなりつつある、ということです。だからこそ、自社の力で銀行と向き合える状態をつくっておくことが重要になります。
年商3億円未満・地方の建設業ほど、他人事ではない理由
特に年商3億円未満、地方の建設業の社長にとって、この問題は他人事ではありません。
メガバンクは相手にしてくれず、地方銀行も本店から遠い先は優先順位が下がりがちです。実質的に信用金庫が「最後の砦」という中小建設業は、本当にたくさんあります。その砦がいま揺らいでいる——だからこそ、早めの備えが効いてきます。
では、建設業の社長は今、何をすべきか
では、信用金庫をメインバンクにしている建設業の社長は、今から何をしておけばよいのでしょうか。
大切なのは、「いざというときに借りられる会社」であるための準備を、資金が必要になる前から始めておくことです。
「もう借りられない」と諦める前にできる準備
まず取り組みたいのは、自社の財務の「見える化」です。
月次の試算表を早期に締め、資金繰り表を先々まで作り、「なぜこの資金が必要で、いつ・どう返すのか」を数字で語れる状態にしておくこと。
金融機関の審査が慎重になるほど、「会社の現状を数字で説明できるかどうか」の差は大きくなります。
金融機関と話す前に、最低限ここまでは見える状態に
- 月次試算表を早期に締める
- 今後の資金繰り表を作る
- 必要な借入額と資金使途を明確にする
- いつ、どのように返済するのかを数字で説明できるようにする
メインバンクが揺らぐ前に、取引金融機関の複線化を考える
もう一つ考えておきたいのが、取引金融機関の複線化です。
信用金庫だけに依存している場合、他の金融機関との接点をつくっておくこともリスク分散になります。
ただし、やみくもに口座を増やせばよいわけではありません。自社の規模・地域・事業内容に合った先を、順序立てて開拓することが大切です。
今のメインバンクとの関係を大切にしながら、いざというときに相談できる金融機関を複数持っておく。これからの金利上昇局面では、こうした備えも財務戦略の一つになります。
実績・事例——建設業に特化してきたから見える「打ち手」
シードコンサルティングは、建設・リフォーム業界の中小企業に特化し、これまで500社を超える建設業経営者を支援してきました。
財務だけでなく、100件を超える事業承継案件にも関わるなかで感じるのは、資金繰りの問題は「お金が足りなくなってから」では、打てる手が一気に少なくなるということです。
反対に、まだ資金に余裕がある段階で自社の数字を整理し、金融機関との関係を整えておけば、選べる手段は増えます。
そのため、私たちは「財務の右腕」や「Seed式資金設計図」を通じて、単に融資を受けるためではなく、社長自身が自社の財務を理解し、先を見て判断できる状態をつくることを重視しています。
資金が必要になってからでは、選択肢は減ります
信用金庫の赤字急増というニュースを見て、すぐに「自分の会社も借りられなくなる」と考える必要はありません。ただし、金融環境が変わってから慌てて動くのではなく、まだ余裕があるうちに財務の現在地を把握し、資金繰りと金融機関との関係を整えておくことが重要です。
よくある質問(FAQ)
Q. 信用金庫が赤字になると、取引先への融資はすぐ止まりますか?
A. すぐに融資が止まるわけではありません。ただし、赤字や含み損が大きい信金ほどリスク管理を厳しくする可能性があり、新規融資・増枠・条件変更の審査が慎重になることは考えられます。大切なのは、資金が必要になってから動くのではなく、今のうちに自社の財務状況を整理しておくことです。
Q. 信用金庫をメインバンクにしている建設会社は、銀行を変えた方がよいですか?
A. すぐにメインバンクを変える必要はありません。長年の取引関係は大切な財産です。一方で、一つの金融機関だけに依存するリスクはあります。現在の関係を維持しながら、自社の規模・地域・事業内容に合った別の金融機関とも接点をつくり、資金調達先を複線化しておくことが備えになります。
Q. 金利が上がると、建設業の資金繰りにはどんな影響がありますか?
A. 借入金利の上昇によって支払利息が増えるだけでなく、金融機関側の審査姿勢が変化する可能性があります。特に借入依存度が高い会社や、手元資金に余裕がない会社では影響が大きくなります。金利だけを見るのではなく、借入残高・返済予定・今後の資金需要まで含めて確認することが重要です。
Q. 金融機関に融資を相談する前に、何を準備しておけばよいですか?
A. まず月次試算表を早期に締め、今後の資金繰り表を作成してください。そのうえで、「いくら必要なのか」「何に使うのか」「いつ、どのように返済するのか」を数字で説明できる状態にしておくことが重要です。金融機関の審査が慎重になるほど、経営者自身が自社の数字を説明できることが大切になります。
Q. 資金繰りにまだ困っていなくても、対策は必要ですか?
A. むしろ、まだ困っていない段階で準備することが重要です。資金が不足してからでは、金融機関との交渉や借換えなど、選べる手段が限られます。余裕があるうちに財務の現在地を把握し、今後必要になる資金と金融機関との関係を整理しておくことで、選択肢を残すことができます。
この記事の著者
岡田 聡(おかだ さとし)|株式会社シードコンサルティング 代表取締役
建設・リフォーム業界の中小企業に特化した財務・事業承継・M&Aコンサルティングの専門家。20年以上にわたり500社超の建設業経営者を支援。100件以上の事業承継案件を手がけた実績を持つ。YouTube「建設業支援TV〜お金のミカタ〜」で業界の経営ノウハウを発信中。日本経営士協会 経営士、(一社)相続事業承継コンサルティング協会 理事・エグゼクティブコンサルタント。認定経営革新等支援機関(107613009112)。
「うちのメインバンクは大丈夫だろうか」と感じたら
「今のうちに、どんな備えをしておけばいいのか」——そう感じた社長は、資金が必要になる前に一度、自社の財務と資金繰りを整理してみてください。
シードコンサルティングでは、月次伴走型の「財務の右腕」と、資金繰りの全体像を描く「Seed式資金設計図」を通じて、建設業の財務・資金調達を支援しています。
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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の融資・税務・法務に関する助言ではありません。実際の対応にあたっては、税理士・専門家にご相談ください。
