建設業の「価格転嫁できている」は3段階ある──利益が残らない本当の理由と財務の見える化

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カテゴリ:建設業経営

「値上げはしている。でも、なぜかお金が残らない」──ナフサショックへの対応として価格転嫁に取り組んでいる建設会社の社長から、こうした声が増えています。その原因は、価格転嫁に3つのレベルがあることを意識できていないからです。

198社のアンケート分析をもとに、シードコンサルティングの岡田聡が「値上げしただけでは不十分な理由」「サプライチェーン全体でしわ寄せが集中する構造」「そして根本治療としての財務の見える化」について解説します。

3段階
価格転嫁の
レベル構造
198社
アンケート
分析データ
レベル3
本当の
価格転嫁
月次管理
財務見える化の
土台

「価格転嫁できている」とは何か
価格転嫁とは、原価上昇分を販売価格に上乗せして、粗利率・営業利益率を以前と同水準に維持することです。単に値上げを実施した状態(レベル1)は入口に過ぎず、固定費・人件費まで守れた状態(レベル3)が本来の意味での価格転嫁です。

価格転嫁の3つのレベル

「値上げした」=「価格転嫁できた」ではありません。どのレベルで止まっているかを正確に把握することが出発点になります。

レベル1:値上げしただけ

材料費・外注費が上がったので単価を上げた。しかし上げ幅が不十分で、粗利率が以前より低下している状態です。

忙しくなるほど赤字が積み上がる危険な状態であり、最も多いケースです。

レベル2:粗利率を守れた

原価上昇分を価格へ転嫁し、粗利率を従来と同水準に維持できている状態です。ただし、人件費・固定費の上昇はカバーできていない可能性があります。

レベル3:営業利益まで守れた(本当の価格転嫁)

人件費の賃上げ・固定費上昇分まで価格へ反映し、営業利益率を維持できている状態です。ここまで達成できると、手元キャッシュが増える好循環が生まれます。

現場でよく起きていること
「価格転嫁はしている」とおっしゃる社長でも、案件別粗利や月次営業利益を把握していないケースが多くあります。結果として「なんとなく値上げした」にとどまり、レベル1から抜け出せていません。

なぜ下請け・小規模事業者にしわ寄せが集中するのか

ナフサ高騰はサプライチェーン全体を通じて価格転嫁されます。しかし、連鎖の最末端に近づくほど「価格交渉力の非対称性」が生まれます。

① メーカー:値上げを実施しやすい

② 商社:仕入れ上昇分を転嫁しやすい

③ 元請け工務店:下請けへ交渉できる立場

④ 下請け工事会社・小規模事業者:値上げを言い出しにくい

198社のアンケート分析でも、資金繰り悪化が集中しているのは、価格交渉力が弱い最末端の施工会社です。

構造的な問題だからこそ
「価格転嫁すればいい」という一言で済む話ではありません。構造上できないからこそ、しわ寄せが来ています。だからこそ、公的支援の活用(症状対応)と、財務の見える化(根本治療)の両輪が必要です。

「症状対応」と「根本治療」を同時に進める

症状対応:今すぐ資金繰りを手当てする

セーフティネット保証5号・日本政策金融公庫などの公的支援を活用し、まず手元キャッシュを確保することを最優先にしてください。「まだ余裕がある今のうち」に動くことが重要です。

根本治療:財務の見える化を進める

月次試算表・工事台帳・資金繰り表の3点が整備されると、「いくら値上げすべきか」「いくら借りれば足りるか」「どの案件が赤字か」が見えるようになります。

岡田からの提案
ナフサショックはいつか収まります。しかし次の「○○ショック」は必ずやってきます。今回をきっかけに、月次試算表・工事台帳・資金繰り表・銀行対応・価格転嫁の仕組みが整った状態を、1年後には実現しましょう。

今日から着手すべき3つのアクション

① 自社の価格転嫁レベルを確認する

直近3〜5件の案件について、受注時と完工後の粗利率を比較してください。「値上げした」という感覚と実際の数字が一致しているか確認することが出発点です。

② 工事台帳・資金繰り表の整備を始める

まず「工事台帳(案件別粗利管理)」から始めるのが現実的です。既存のExcelでも構いません。案件ごとに受注金額・原価・粗利を記録する習慣をつくりましょう。

③ 「ゆとりがある今」に資金調達を動かす

財務数字の見える化と並行して、公的支援活用を急いでください。準備が手間な場合は、認定経営革新等支援機関のサポート活用が有効です。

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「価格転嫁できているつもりだったが、利益が残っていない」「月次で財務数字を見る仕組みをつくりたい」という方へ。財務の現状診断から、数字が動く経営への改善ロードマップを一緒に整理します。

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よくある質問(FAQ)

Q. 価格転嫁できているか、自社で確認する方法はありますか?

A. 直近案件の粗利率を1〜2年前と比較してください。粗利率が下がっていればレベル1、維持できていればレベル2、営業利益も維持できていればレベル3です。

Q. 下請け会社が値上げ交渉するコツはありますか?

A. 感情ではなく、材料費・外注費の上昇を数字で示すことが重要です。契約書に価格変動条項を盛り込む「仕組み化」も有効です。

Q. 最初に整備すべき財務資料は?

A. まずは工事台帳(案件別粗利管理)です。これが整うと、価格転嫁・赤字案件把握・銀行対応の精度が大きく変わります。

この記事の著者

岡田 聡(おかだ さとし)
株式会社シードコンサルティング 代表取締役
建設・リフォーム業界の中小企業に特化した財務・事業承継・M&Aコンサルティングの専門家。20年以上にわたり500社超の建設業経営者を支援。YouTube「建設業支援TV〜お金のミカタ〜」で業界の経営ノウハウを発信中。

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