建設業の事業承継はなぜ「相続とセット」で考えるべきか|資産を守る設計の考え方
カテゴリ:建設業経営
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建設業の事業承継は、相続対策と切り離して進めると、本来残せたはずの資産を数億円単位で失う可能性があります。
結論から言えば、承継と相続はセットで設計すべきです。理由はシンプルで、自社株の評価は「誰に・いつ・どう」渡すかで数倍変わり、その差がそのままオーナー一族の手残りを左右するからです。
本記事では、地方で80年以上続く年商12億円の土木工事会社の事例をもとに、「株が会長に偏っている」状態を放置するとどうなるのか、資産を守りながら次世代へ引き継ぐための設計の考え方を解説します。
創業歴
年商規模
残る株式
評価額
相続と事業承継のセット対策とは
株式の移転・M&Aによる売却・相続税を一体で捉え、最も資産が残る時間軸と方法を設計する承継の考え方です。事業承継だけ、相続だけ、目先の税金だけを個別に見ると、全体では手残りが数億円単位で目減りすることがあります。
なぜ建設業の事業承継は「相続とセット」で考えるべきか
「今の税金」だけを見ると、全体で損をする
事業承継の相談で最も多いのが、「株をどう移すか」「今の贈与税をどう抑えるか」という目の前の一手だけに焦点が当たっているケースです。
もちろん、それも大事です。しかし、承継・M&A・相続はすべてつながっています。
部分最適ではなく、全体最適で考える
ある部分だけを最適化しても、別の部分でそれ以上のお金が出ていってしまえば、一族全体で見れば損をしていることになります。
私たちが「相続と事業承継はセットで」とお伝えしているのは、この全体像を見ないと本当の手残りが見えないからです。
資産が先代に集中すると、次に来るのは相続税
よくあるのが、株や資産が会長、つまり先代に大きく偏っている状態です。会社が高く評価される優良企業ほど、この偏りは深刻になります。
仮に会社が高値で売却できたとしても、そのお金が会長のもとに集中すれば、次に待っているのは相続の局面です。
どの世代に、いつ、どの評価で移すか
せっかく築いてきた資産が相続税で大きく目減りしてしまえば、これほど残念なことはありません。早い段階から時間軸を設計することが、一族の資産を守る鍵になります。
年商12億円・土木工事会社で起きていた資産の偏り
会長7割・社長3割という株の状態
今回ご相談を受けたのは、地方都市で80年以上続く、地域では信頼とブランドのある年商12億円の土木工事会社です。
・会長:70代後半。株式の7割を保有
・社長:50代前半のご子息。株式の3割を保有
会長はすでに退職金を受け取り、事業は社長に任せて完全に引退する段階に入っていました。ここまでは、親子間の承継としてよくある形です。
M&Aなら10億円。でも、そのままでは相続で目減りする
問題は、その先に将来のM&A、つまり第三者への売却という出口も視野に入っていたことです。
仮にこの会社が約10億円で売却できるとすると、その7割が会長に入ります。事業を任されている社長からすれば、会社の価値を高めた分の多くが先代に集中する構図です。
そして会長に集まった資産は、いずれ相続の対象になります。「高く売れればいい」という視点だけでは見えない落とし穴が、ここにあります。
自社株の評価は「親族内承継」と「M&A」で数倍変わる
同じ会社でも、評価額はまったく違う
意外に知られていませんが、親族内で株を承継するときの評価と、M&Aで株式を譲渡するときの評価は、まったくの別物です。
親族内の承継では、外部に売るわけではないため、相続税評価など一定のルールで自社株を評価します。一方、外部へのM&Aでは、事業の収益力やブランドを含めた市場価格がつきます。
評価差が、手残りを左右します
たとえば、親族内承継の評価では自社株が4億円でも、外部へのM&Aでは10億円の値がつく。このような差が生じることは珍しくありません。
評価が下がっているタイミングを逃さない
今回の事例で私たちが注目したのは、株の評価が下がっている絶好のタイミングだったことです。
・会長が大きな退職金を受け取った直後だった
・その期に特別損失を計上し、業績上も評価が下がっていた
自社株評価が下がっているこの局面こそ、親族内で株を移転する、つまり会長から社長へ引き継ぐのに有利なタイミングです。
相続まで見据えた事業承継設計が資産を守る
この事例で私たちがご提案したのは、「今すぐM&Aをするか」「今すぐ株を移すか」という二者択一ではありません。
将来のM&Aという選択肢を残しながら、自社株評価が低い今のタイミングで株式を親族内へ移転し、その後に会社価値を高めていくという時間軸を考慮した設計です。
こうした設計を行うことで、会社の成長によって生まれる価値を次世代へ移し、将来発生する相続税の負担も抑えられる可能性があります。
時間を味方につける承継
承継対策は「早くやること」ではなく、「最適なタイミングで動くこと」が重要です。評価額・相続・会社の成長、この3つを時間軸で設計することで、残せる資産は大きく変わります。
建設業経営者に伝えたいこと
建設業の事業承継は、「社長を交代すること」がゴールではありません。
本当に重要なのは、会社・株式・家族の資産まで含めて、次世代へどう引き継ぐかという全体設計です。
「相続が起きてから考える」のでは遅すぎます。会社の評価が変わる前、相続が発生する前だからこそ、選べる選択肢があります。
事業承継・自社株対策・M&A・相続対策は、すべて一つのストーリーとして考えること。それが会社も家族も守る承継につながります。
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よくある質問(FAQ)
Q. 建設業の事業承継は社長交代だけで終わりますか?
A. いいえ。株式・相続・税金・資産まで含めて設計することで、本当の意味での事業承継になります。
Q. M&Aを考えていても相続対策は必要ですか?
A. はい。売却代金が誰に帰属するかによって、その後の相続税負担が大きく変わるため、M&Aと相続は一体で考える必要があります。
Q. 自社株は早く移した方が良いのでしょうか?
A. 必ずしも早ければ良いわけではありません。会社の評価額や将来計画を踏まえ、最適なタイミングで移転することが重要です。
Q. 相続対策だけ税理士へ相談すれば十分ですか?
A. 相続税だけでなく、事業承継・M&A・自社株評価まで含めた全体設計が重要です。それぞれを切り離さずに検討することをおすすめします。
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この記事の著者
岡田 聡(おかだ さとし)
株式会社シードコンサルティング 代表取締役
建設業専門の財務・事業承継・M&Aコンサルタント。500社を超える建設会社を支援し、自社株対策、相続対策、M&Aまでを一体で設計する「未来から逆算する事業承継」を提案している。
