ナフサショック最新動向(2026年6月):「元に戻った」は危険。建設業が今すぐやるべき3つの原価防衛策
カテゴリ:建設業経営
吉野石膏20%、アイジー工業18%以上、ケイミュー20〜30%以上──主要建材メーカーの値上げが一斉に動き出しています。一方、建設業の倒産は4月単月で185件(前年同月比18.6%増)と過去最多ペースが続いており、「注文はできるが、利益が残らない」という新たな局面に入りました。
本記事では、2026年6月時点の事実を整理した上で、受注残の利益を守るために今すぐ着手すべき3つの原価防衛策を解説します。
前年同月比+18.6%
値上げラッシュ
値上げ幅
代替調達率
ナフサショックとは
中東情勢の変動を起因とするナフサ(石油化学原料)の供給不安が、住設機器・建材の価格高騰と供給制約を引き起こし、建設業の原価構造と資金繰りに連鎖的な打撃を与えている現象を指します。
2026年6月時点の「3つの事実」
事実①:住設メーカーの受注は再開──パニック期は過ぎた
4月にTOTO・LIXIL・クリナップが相次いで受注停止・納期未定となり、業界に大きな動揺が広がりました。6月時点では、主要メーカーの受注は再開済みです。TOTO・LIXIL・クリナップは5月時点で通常+1〜2週間の水準まで回復し、Panasonicも5月中旬から納期回答を再開しています。
事実②:6月は「値上げラッシュ」の本番
供給のパニックが落ち着いた一方で、6月からの価格改定が一斉に動き始めています。吉野石膏、アイジー工業、ウッドワン、ケイミュー、セキノ興産、ノーリツ、田島ルーフィングなど、主要建材メーカーの価格改定が続きます。
事実③:建設業の倒産は過去最多ペースで推移
帝国データバンクの4月データによると、建設業の倒産は185件で前年同月比18.6%増。3月も191件で同11.7%増でした。4月の物価高倒産は全産業で108件と集計開始以来最多を記録し、そのうち建設業が33件で最多業種です。
つまり、6月の現実はこうです
「注文はできるが、価格は上がり、届く時期も読みにくい」。住設メーカーの受注再開はポジティブなニュースですが、「元に戻った」と判断するのは早計です。
政府発表と現場の「温度差」
政府は4月30日、高市首相が「ナフサの供給は中東以外からの代替調達により、年を越えて継続できる見通し」と表明しました。5月時点で非中東産ナフサの代替調達率は約6割に達し、在庫は国内需要4ヶ月分を確保していると発表されています。
数字の上では、確かに「足りている」のかもしれません。しかし、ナフサと一口に言っても、企業によって必要な種類やグレードが異なり、生産・調達の現場はより複雑です。
現場で見るべきポイント
「ナフサの総量」は足りている。しかし「現場で必要な資材」が足りているとは限りません。品番単位の欠品、納期の不確実性、そして値上げの波はまだ続いています。
今すぐ着手すべき3つの原価防衛策
状況が不透明な中でも、今のうちにできることがあります。シードコンサルティングが500社超の建設業支援の中で効果を確認してきた、実務レベルのアクションを3つに絞って解説します。
防衛策①:受注残の原価を、6月の新価格で再計算する
6〜8月にかけて主要建材が軒並み上がります。過去の見積で受けている案件は、今の価格で計算し直してください。「粗利が残るか」を確認するだけで、手を打つべき案件が見えてきます。
防衛策②:見積有効期限と契約条件を見直す
資材価格がこれだけ動いている局面では、30日・60日の見積有効期限はリスクそのものです。資材変動が大きい工事は7〜14日に短縮し、「発注時単価で再見積」の一文を入れるだけでも、赤字リスクは大きく下がります。
契約書に入れるべき1行
「燃料・運搬費・主要資材価格が急変した場合、請負代金および工期について協議の上、変更となる可能性があります。」
防衛策③:重要資材の納期を、案件ごとに事前確認する
ルーフィング、塗料、防水材、シーリング材、塩ビ管など、「止まると全工程が止まる資材」だけは、着工前に納期と現物の確認を済ませてください。人を入れてから資材が届かないのが、最悪のパターンです。
まとめ:「元に戻った」と思わないこと
① 住設メーカーの受注は再開済み。パニック期は過ぎた
② しかし6月以降、建材の値上げラッシュが本格化
③ 政府は「供給は足りている」と発表。しかし現場の実感とのギャップがある
④ 建設業の倒産は過去最多ペースで推移中
⑤ 今やるべきは、受注残の再計算、見積条件の見直し、重要資材の納期確認
収束にはまだ時間がかかりそうです。中東情勢が根本原因であり、日本単独で解決できる問題ではありません。ただ、「いつ終わるか」を待つのではなく、「この状況で利益と現金を守る体制」に切り替えることが、今、最も大切なことだと考えています。
無料相談のご案内
「うちの場合、受注残の見直し方がわからない」「銀行への説明をどう組み立てるか相談したい」「公的支援を活用した資金調達の方法を知りたい」――そういった個別のご相談を、初回60分・オンライン対応可・無料でお受けしています。
御社の財務データに基づいた「Seed式資金設計図」診断を通じて、現状の課題と具体的な打ち手を一緒に整理します。
よくある質問(FAQ)
Q. ナフサショックはいつ収束しますか?
A. 2026年6月時点では収束時期の見通しは立っていません。中東情勢が根本原因であり、日本単独で解決できる問題ではないためです。政府は代替調達率約6割・在庫4ヶ月分の確保を発表していますが、品番単位の欠品や納期の不確実性は続いています。
Q. 建材の値上げ分を元請・施主に転嫁するにはどうすればいいですか?
A. 契約書に価格変動条項を1行入れることが出発点です。「燃料・運搬費・主要資材価格が急変した場合、請負代金および工期について協議の上、変更となる可能性があります」という一文があるだけで、交渉の土台が変わります。
Q. 受注残の原価見直しは、具体的にどう進めればいいですか?
A. まず6月以降の新価格で、受注済み案件の案件別粗利を再計算してください。粗利がマイナスまたは5%以下に落ちる案件を洗い出し、追加・変更工事の未請求額も確認します。
Q. 建設業の倒産が過去最多ペースですが、どのような会社が危険ですか?
A. 物価高倒産の特徴は、売上は立っているのに利益と資金が残らないパターンです。原価管理が年度末の決算まで手付かずの会社、見積有効期限が30日以上で価格変動リスクを吸収している会社、重要資材の納期を事前確認していない会社は特に注意が必要です。
この記事の著者
岡田 聡(おかだ さとし)
株式会社シードコンサルティング 代表取締役
建設・リフォーム業界の中小企業に特化した財務・事業承継・M&Aコンサルティングの専門家。20年以上にわたり500社超の建設業経営者を支援。100件以上の事業承継案件を手がけた実績を持つ。YouTube「建設業支援TV〜お金のミカタ〜」で業界の経営ノウハウを発信中。
https://seed-consulting.jp/
“`
