建設業の人手不足は解消できるのか?採用では解決しない時代の生き残り方

カテゴリ:建設業経営

結論から言えば、建設業の人手不足を「人を増やして解消する」ことは、もうできません。

建設業の就業者数は1997年の685万人をピークに、2024年には477万人まで減少しました。現場を担う技能者も、464万人から303万人へと減っています。

一方で、インフラ更新、災害対応、都市再開発、建物の改修など、建設需要は増え続けます。いま経営者が立てるべき問いは、「どう採用するか」ではなく、「人が減っても回る現場に、どう作り替えるか」です。

685万人
1997年の
建設業就業者数
477万人
2024年の
建設業就業者数
303万人
2024年の
建設技能者数
最大1億円
省力化投資補助金の
上限例

建設業の省力化投資とは
人を増やすのではなく、人が減っても現場が回る仕組みへ、業務プロセスそのものを作り替えるための設備・システム投資です。これからの中小建設会社にとって、省力化は「やったほうがよい」ではなく、「やらなければ回らない」経営課題になっています。

人手不足は「採用」で解決できない構造問題

数字が示す不可逆な現実

建設業の人手不足は、一時的な景気の波ではありません。人口構造そのものに根ざした、不可逆な変化です。

建設業の就業者数は1997年の685万人をピークに減少を続け、2024年には477万人となりました。ピーク時のおよそ7割です。

とくに深刻なのが、現場の実務を担う技能者の減少です。1997年に464万人いた建設技能者は、2024年には303万人まで減りました。

さらに、現在現場を支えている高齢層の多くが、今後10年の間に離職すると見込まれています。新しい人材を採用しても、退職者数を埋められない会社が増えていく可能性があります。

採用努力だけでは追いつきません
人手不足の原因は、会社ごとの採用力だけではなく、働き手そのものが減っていることです。採用の工夫は必要ですが、それだけで根本解決する状況ではありません。

仕事は減らず、担い手だけが減っていく

一方で、建設需要そのものはなくなるどころか、増えていくと考えられます。

・老朽化したインフラの更新

・自然災害への対応

・都市再開発

・住宅や建物の改修

「仕事は増える。しかし、担い手だけが減り続ける」。この構造が、建設業の人手不足問題の本質です。

問いを立て直す

これまで多くの会社が、「どうすれば人を採用できるか」を考えてきました。

もちろん、採用や人材定着はこれからも重要です。しかし、それだけでは会社を維持できません。

これから立てるべき問い
「どうすれば人を採れるか」ではなく、「人が減っても回る現場に、どう作り替えるか」。この視点へ転換できるかどうかが、今後の会社の明暗を分けます。

国も「人は増えない」前提で動いている

補助金制度が示す国のメッセージ

国も、人手不足が一時的なものではないと理解しています。その考え方が表れているのが、現在の補助金制度です。

たとえば中小企業省力化投資補助金は、IoT・ロボット・システムなどを導入し、少ない人数で仕事を回せる会社へ変えるための制度です。

一般型では、補助上限が最大1億円となる場合があり、補助率も企業規模や賃上げ要件などによって変わります。

単純な設備買い替えではありません
審査で問われるのは、「その投資によって、どれだけ人手を減らせるのか」です。古くなった設備を新しくするだけではなく、業務の進め方まで変える計画が必要です。

国が大規模な予算を投じて省力化を後押しするのは、働く人の数が再び大きく増えることを前提にしていないからだと考えられます。

※補助金の上限額・補助率・要件・公募スケジュールは、公募回によって変わります。申請時には最新の公募要領をご確認ください。

2024年問題が「待ったなし」を決定づけた

建設業では、2024年4月から時間外労働の上限規制が適用されています。

これまで長時間労働で何とか回してきた現場も、労働時間を減らしながら、同じ仕事量をこなさなければなりません。

生産性向上は、すでに経営の前提です
人手が減り、労働時間にも上限が設けられた以上、生産性向上は「やったほうがよい施策」ではなく、「やらなければ現場が回らない前提」へ変わっています。

展示会で見えた「人を減らす技術」の現在地

この前提で建設・測量の展示会を歩くと、見える風景がまったく変わります。

会場に並んでいたのは、単なる新しい機械ではありません。人が減っても現場を回すための技術でした。

・自律走行するローラー

・遠隔操作できる建設機械

・LiDAR搭載ドローンによる測量

・3Dデータを活用した施工管理

これらはいずれも、現場の仕事の進め方そのものを変え、必要な人数を減らすための技術です。

展示会では、従来の手作業と比較して、人役を大幅に削減できた事例も紹介されていました。効果は現場条件によって異なりますが、省力化技術はすでに実装段階に入っています。

補助金の使い分けは「攻め」か「守り」で考える

多くの経営者が迷うのが、どの補助金を使えばよいのかという点です。

考え方はシンプルです。その投資の目的が、「攻め」なのか「守り」なのかで整理します。

攻め:新しい収益源となる事業を始める

ドローン点検などを、新しい事業として立ち上げるケースです。新事業や革新的なサービス開発を支援する補助金が候補になります。

守り:現在の現場を、人が減っても回る仕組みに変える

自社の測量、点検、施工管理などを省人化するケースです。中小企業省力化投資補助金が候補になります。

同じ設備でも、目的によって補助金は変わります
ドローンを新規事業として使うのか、自社の現場を省人化するために使うのか。設備名ではなく、投資目的から補助金を選ぶことが重要です。

中小建設会社が今すぐ始めるべき3つのアクション

人手不足は、数年後ではなく「今」向き合うべき経営課題です。では、何から始めればよいのでしょうか。

1.まずは現場以外の業務をAIで効率化する

最初に取り組みたいのは、議事録、見積書、安全書類、施工計画書、日報などの事務作業です。

生成AIを活用すれば、現場監督や経営者が書類作成に費やす時間を減らし、本来注力すべき現場管理や顧客対応へ時間を振り向けることができます。

DXは現場からではなく、デスクから始める
小さな業務改善の積み重ねが、現場全体の生産性向上につながります。

2.補助金を活用して省力化投資を進める

人手不足への対応は、「設備を買うこと」が目的ではありません。

重要なのは、どの工程を改善し、どれだけ人手を削減できるかという業務全体の設計です。

補助金は、その経営改革を加速させる手段として活用することが、本来の使い方です。

設備より先に、業務フローを描く
「何を買うか」ではなく、「どう変えるか」。この順番で考える会社ほど、補助金も経営成果も得やすくなります。

3.人材の役割を変える

AIやロボットが進化しても、人が不要になるわけではありません。

むしろ、人には判断・調整・顧客対応・品質管理など、人にしかできない仕事がより求められるようになります。

これからの人材育成は、「作業を教える」だけでなく、「考える力」を育てることが重要になります。

AI時代でも、人が価値を生み出す
AIやロボットが担うのは反復作業です。最終的な判断やお客様との信頼関係は、人だからこそ築けます。

建設業経営者に伝えたいこと

人手不足は、これからも続きます。

しかし、それは悲観するための情報ではありません。

人が減ることを前提に経営を組み立てた会社は、競争力を高めることができます。

「人を増やす経営」から、「人が減っても利益が残る経営」へ。その発想の転換こそが、これからの建設会社に求められる経営戦略です。

無料相談のご案内

「人手不足にどう対応すればいいか分からない」「補助金を活用して省力化を進めたい」という建設会社経営者の方へ。

シードコンサルティングでは、現場改善・補助金活用・財務戦略を一体で整理し、御社に合った実行プランをご提案しています。

初回60分・オンライン対応可・無料

よくある質問(FAQ)

Q. 建設業の人手不足は採用だけで解決できますか?

A. 難しい状況です。採用活動は重要ですが、それと同時に、省力化やDXによる生産性向上を進めることが不可欠です。

Q. 省力化投資補助金は設備更新にも使えますか?

A. 単なる設備更新ではなく、人手不足解消や生産性向上につながる事業計画が求められます。

Q. まず何からDXを始めればよいですか?

A. 議事録や見積書、安全書類など、日常業務で時間のかかる事務作業から始めると効果を実感しやすくなります。

Q. 補助金はどれを選べばよいですか?

A. 新規事業なのか、省力化なのかによって適した制度は異なります。設備ではなく、投資目的から考えることが大切です。

関連記事(補助金シリーズ)

  1. 建設業の人手不足対策
  2. 建設業の省力化投資
  3. 新事業進出補助金
  4. ものづくり補助金
  5. 補助金で実現する経営改革

この記事の著者

岡田 聡(おかだ さとし)
株式会社シードコンサルティング 代表取締役
建設業専門の財務・補助金・事業承継コンサルタント。500社を超える建設会社を支援し、「人が減っても利益が残る会社づくり」をテーマに、経営改善・財務戦略・補助金活用をサポートしている。

財務・事業承継・M&Aにお困りならお気軽に無料相談を

お電話でのお問い合わせはこちら

03-6811-2930

平日09:00〜18:00土日祝日除く